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過労死水準を超えた小中学校教員の勤務実態

NHKラジオ「日曜コラム 日本を読む、世界を読む」 5月21日放送

教育ジャーナリストの野原明

 

学習指導要領の改定で学校の授業時間を増やそうとしている中、小中学校の教員の勤務時間が時間外労働の過労死ラインをすでに超えている実態が文部科学省の調査で明らかになりました。

 

この調査は、去年10月から11月にかけての期間で、連続する7日間に何時間勤務したかを調べたものです。

 

それによりますと、全国の公立小学校教諭の平日1日当たりの平均勤務時間は11時間15分で、10年前より43分長くなり、中学校教諭は11時間32分で、32分長くなっていました。

 

その理由として、一つは8年前の学習指導要領の改定で、小中学校の授業時間が増やされたことがあげられます。

 

また、子どもに手厚い指導をするために、複数の教員が授業をする『チームティーチング』が行われたり、少人数学習が増えた利したことが、教員の勤務時間の増加に拍車をかけたと思われます。

 

さらに、団塊の世代の教員の大量退職で、若い教員の比率が高くなり、ベテランに比べて授業準備に時間がかかるようになったことも要因になっているようであります。

 

また、土曜・日曜では、中学校教諭の勤務時間が3時間22分あって、10年前より1時間49分長く、ほぼ倍増していることがわかりました。

 

この背景には、中学校の部活動が活発になって、土曜日・日曜日に練習や試合が多く行われていることに原因があると考えられます。

 

小中学校共に、平日の勤務時間が最も長いのは副校長・教頭で、小学校中学校とも平均12時間余りと、10年前に比べて21分から49分長くなっています。

 

副校長・教頭の勤務時間が長いのは、校長を助けて学校全体を総括する仕事に加えて、保護者対応や地域との連携などを担当し、文部科学省教育委員会の調査に対する対応、あるいは報告書づくりなどに追われていることを表しています。

 

ところで、先ごろ大手広告代理店で若い女性社員が過労から自殺した問題が社会の大きな関心を集めました。

 

その際に、世間で知られるようになった労災認定基準によりますと、時間外労働の過労死ラインというのは、時間外労働が1カ月に100時間を超えるか、あるいは2カ月から6カ月の月平均で80時間以上となっております。

 

この基準に今回の文部科学省調査の結果を当てはめますと、小学校教諭の約2割と中学校教諭の約4割が、1カ月に100時間を超えています。

 

また、小学校教諭の約3割と中学校教諭の約6割が、2カ月から6カ月の月平均で80時間を超え、過労死ラインの基準をオーバーしていることになります。

 

この結果について、松野文部科学大臣は、「見過ごすことのできない深刻な事態」と語っておりますが、担当大臣としてこれにどう対処するのかの具体策を提示する責任があるのではないでしょうか。

 

安倍内閣は、教育再生を政策の大きな柱に掲げていますが、文部科学省が教員定数を増やすための予算の増額を要求しても、財務省財政制度等審議会が、これを認めないという状態が毎年のように続いております。

 

教員の勤務に余裕がなければ、子どもの教育を充実させることは不可能です。

 

政府は、義務教育学校の教員を増やして、子どもたちの教育の充実を図ったり、教員の長時間勤務の深刻な状況を解消する責任があります。

 

そのためには、教育再生を掲げる総理大臣が、強いリーダーシップを発揮して、教育の抱える深刻な課題の解決に努力してほしいものであります。

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