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前川前次官の出会い系バー通いを報じた記事。情報の出所はどこなのか? #青木理 TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ」

TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ」6月5日放送

 

「ボイス」青木理

前川前事務次官の問題というのは、首相のご意向あるいは官邸の意思によって文部科学行政が従来は認められていなかった新学部を認可するという方向に捻じ曲げられたんじゃないか、ひょっとしたら首相の意思によって変えられた可能性もあるし、官僚あるいは周辺の忖度によってやられたのかもしれないということです。

まさにこの点を国会等で明らかにしていってほしいところなんですが、この問題が報じられる中でいろんなものがあぶりだされたという気がします。

その一つが我々自身の事でもあるんですが、メディアの問題です。

前川さんのインタビューはこの番組では生放送をしたし、それ以外にも朝日新聞週刊文春など様々なメディアで行われています。

実は、ある大手メディアが前川さんのインタビューをかなり早い段階で撮ってたんだけど報道していないというケースもあるそうです。

それはなぜなのか分かりません。

分かりませんが、ニュース価値がないとはとても思えません。

おそらく何かを忖度して報道するのをやめたんでしょうけど、そのようなことが起きているということが異常なことだと思います。

それから、読売新聞による出会い系バー通い報道です。

なぜあの時期だったんでしょうか。

朝日新聞毎日新聞などで総理のご意向文書が報道されて、その後に前川さんが実名で記者会見したり各種取材に応じるするちょうどその間に出会い系バー通いが報道されました。

前川さんはこの番組に出演した際に、去年の秋に官邸の官房副長官に呼び出されて、「お前こんなとこ通ってるんだろ。ダメじゃないか」と言われたとおっしゃっていました。

つまり去年の秋の段階で鑑定は知っていたわけです。

それがなぜこの時期に一部メディアすなわち読売新聞に出たのか。

また、前川さんは誰にも言っていないのになぜそんなことが知られているんだと驚いたともおっしゃっていました。

完全にプライベートの行動ですし、問題視されるようなこともしていなかったからです。

前川さんに注意した官房副長官は警察官僚の方でした。

それも警察庁警備局といういわゆる警備公安警察のトップです。

こんな情報をかき集められるのは警察以外考えられません。

つまり、警察はこうした官僚の人たちのプライバシーを、仕事が終わって夜家に帰る、あるいは飲みに行く、人によっては妻以外の女性・夫以外の男性がいるのかもしれないけど、そうしたプライベートの部分も調べているんですか、ということにならないでしょうか。

私は以前、公安警察の担当記者をしたことがあります。

その当時、こんな話を聞いたことがあります。

ある省庁で局長人事が内定しました。

しかし、この局長人事について警察はとんでもないと思った。

なぜなその局長に内定した人は、以前から共産党のシンパとして警察が睨んでいた人物だったからです。

こんなやつが局長になるなどとんでもないと思った警察は、その人のプライベートを調べ上げたところ、その人に愛人がいることが分かった。

そしてその現場の写真を抑え、その情報を当該省庁に通知し、その人事を白紙に戻させたそうです。

こういうことをこれまでもしてきたんです。

事務次官になるような方ですから、危機管理の点から調べるということなら、そういうこともあるかもしれません。

しかし、もしそうならばそうやって集めた情報厳正に使ってもらわなくては困ります。

今回のように、前川さんが政府のやっていることに対して異議を申し立てようとした瞬間にそんなものを出されたら、官僚の皆さんは委縮してしまいます。

政府のやっていること、政権の意向に逆らった瞬間にこんな情報が出てしまうんだということになってしまいます。

これでは戦前の日本、あるいはどこかの独裁国家と同じではないでしょうか。

情報というものにはそれだけの力があります。

日本では公安警察が情報機関を担ってきていますが、彼らが集めた情報をそのように使い始めたらとても怖いことになります。

ここで共謀罪を考えなければなりません。

共謀罪は、起きてもいない犯罪を事前に取り締まろうという法律なので、どう考えても、かなり広い範囲で市民の日常を取り締まることとセットにならざるを得ません。

そうして集めた情報をこんなふうに使われたら、すごく不自由で抑圧された恐ろしい社会になりかねません。

だから今回の問題は加計学園の問題だけではなく、警察と情報、情報と市民社会、などいろんなことを考えさせられます。

だから、共謀罪の怖さも浮かび上がったんではないかと思います。