築地か豊洲か 判断の行方は 「先読み!夕方ニュース」
NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月5日放送
ニュース解説:合瀬宏毅解説委員
アナウンサー:豊洲市場の移転問題を検証する東京都の市場問題プロジェクトチームの会合が開かれ、豊洲市場に移転する案と築地市場を建て替える案の両論を盛り込んだ報告書をまとめましたが、その内容は築地改修案の可能性を強くにじませたものとなっています。
この築地改修案というのはどんなものなんでしょうか。
合瀬解説委員:報告書が示すのは、現在の築地市場を大幅に改修しながらも、築地ブランドの継続を残すとしたことです。
水産物を適正な温度で取り扱って、鳥などが入って来ない近代的な閉鎖型施設とするとともに、銀座に近い絶好の立地条件を生かしたレストランなどの観光施設を併設すると。
食のノウハウが蓄積した学びの場としても活用できる「食のテーマパーク」が実現できて、強力な築地ブランドを引き継ぐことができるというふうにしています。
工期と費用なんですが、営業を行いながら区画を分けて工事を順番に行うローリング方式で7年852億をかける方式と、もう一つほかの場所に移転して3年をかけて改修する2つの案を示しています。
アナウンサー:一方豊洲に移転した場合はどういうことが検討されているんですか。
合瀬解説委員:報告書はかなり厳しめに見ています。
問題としたのは、土壌汚染の問題と経営の継続性なんです。
土壌汚染対策、これは853億円をかけてやったんですが、東京都が都民に約束した地下水や土壌を環境基準以下にするという目標、これを「無害化」と言っていますが、その約束が果たされていないとしています。
しかも、広さ40ヘクタールの市場整備にかかったおよそ6000億円だけでなく、巨大な設備にかかる光熱費ですとか、施設の整備費、メンテナンスなどの巨額な費用がこれから発生し、市場会計は毎年92億円の赤字が発生するとみています。
これでは市場としてやっていくことが難しく、財政措置を講じなければ市場は20年で閉鎖になるとしています。
アナウンサー:赤字になってやっていけないという理由はどこにあるんですか。
合瀬解説委員:全国の水産物が市場を経由した割合が減っています。
全国で見ると、平成元年には75%あった市場経由率なんですが、年々下がり続けて、25年には54%20ポイント以上減っていまして、取り扱い額も半分以下になっています。
産地とスーパーなどの直接取引とか、インターネット取引などがあって流通が多様化していることが原因なんですが、市場を経由する水産物が減れば、市場の経営は当然悪化します。
市場をめぐる環境が大きく変わる中で、未来にわたって経営を続けることができるのか、市場経営が破たんすれば、結局都の税金で補てんする必要があって、報告書はそこを問題視しています。
アナウンサー:では、築地の改修案が優れているということなんでしょうか。
合瀬解説委員:本当に築地改修案がうまくいくのか疑問です。
というのも、建設にかかる不確定要素が多すぎるんですね。
今回報告書は、現在の築地市場にブロックごとに建物を分けて順に閉鎖して工事をするローリング方式か、一時的に移転先を見つけて工事をする2つの案を提案しているんですが、移転先を見つけての整備というのは過去に1回やったんですが結局見つからなかったんです。
結局ローリング方式でやろうということになって実際に工事を始めたんですが、それも結局途中で市場関係者などの反対によって頓挫してしまったんです。
しかも、もう一つは工事期間なんです。
先月、築地市場の表土から基準を超える鉛や水銀などの有害物質が検出されたことが分かりまして、今後地下10メートルを掘削しての詳細な検査が行われることになっています。
場合によっては、汚染対策もしなくてはならないということもあります。
アナウンサー:そうすると、両論とも難しい選択となりますね。
合瀬解説委員:小池都知事は常々「既定路線という考え方はとらない」というふうに発言しています。
先週行われた都議会の所信表明でも、「安心安全だけでなく、経済合理性や持続可能性の検討して、東京の未来に責任を持った総合的な判断をしていく」としています。
豊洲への移転なのか築地の再整備なのか、間近に迫った東京都議選でも大きな争点になりそうです。
小池知事の判断はこうした中で注目されています。