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日本国民にはスポーツを嫌う権利はないのか? 「ボイス」山田五郎

TBSラジオ荒川強啓デイ・キャッチ」6月8日放送

 

「ボイス」山田五郎

朝日新聞が「スポーツ嫌いダメ。国の目標波紋」と題した記事を出していました。

これは、スポーツ庁が掲げたスポーツ嫌いの中学生を現在の半分に減らすという目標に疑問を投げかけた記事で、一部ではこれが議論を呼んでいます。

そもそものきっかけは、スポーツ庁が3月に発表した「第2期スポーツ基本計画についての答申」というものなんです。

これを読んでみたら、いろいろ驚きました。

中学生だけじゃない、大人に取っても他人事じゃなかったということが分かったんです。

平成24年から文科省が5か年計画で進めてきていたんですね。

スポーツ庁ができたのもその成果らしいです。

第1期で子供の体力低下に歯止めをかけることができた。

過去最多の総メダル数と書いてありました。

何のメダルかは書いてなかったけど、たぶんリオ五輪のことを言ってるんでしょうね。

それを踏まえて、今度は東京五輪もあるということで、新たな5か年の計画を発表しました。

4つの政策があります。

1.スポーツで人生が変わる。

2.スポーツで社会を変える。

3.スポーツで世界とつながる。

4.スポーツで未来をつくる。

ダメなスローガンの典型です。

政策というよりきれいごとを並べただけじゃないですか。

いかにもお役所らしいスローガンなんでこの時点で嫌な予感しかしません。

問題のスポーツ嫌いの中学生を減らす政策というのは、1の「スポーツで人生が変わる」の筆頭にあげられています。

スポーツをする・見る・支える。スポーツ参画人口の拡大の一つなんです。

先程も言いましたように、実はこの政策、中学生とか学生だけじゃなくて、老若男女すべてを対象にしていて、我々にとっても他人事ではないんです。

成人に対しては、現在32.9%の成人がスポーツ未実施者なんですって。

このスポーツ未実施者とは、1年に1度もスポーツをしなかった人のことらしいです。

それが32.9%もいる。

この数を何とゼロに近づける。

中学生以上に厳しい目標が掲げられているんですよ。

しかも、そのための具体的施策というのが恐ろしいですよ。

産業界および地方公共団体保険者等と連携し、通勤時間や休息時間等に気軽にスポーツに取り組める環境づくりを推進。

民間事業者における健康掲揚を促進されてしまうんですよ。

すでに動き出していまして、6月1日の日経の記事によると、クールビズを参考にしまして、通勤時に一駅歩「ウォークビズ」、昼休みなどに運動する「スポーツビズ」を提案する計画らしいですよ。

どう思いますか、日本の働くみなさん。

ウォークビズで朝から一駅分歩かされて、汗だくになって会社につくと、クールビズで冷房が効いてないんですよ。

死にますよ。ホントに。

冗談じゃない。

ちなみに先程成人の32.9%が1年に1度もスポーツしなかったっていうスポーツ庁のデータがありましたけど、このうち実に27.2%が「今後もするつもりはない」と答えてるんですよ。

これ多いでしょ。

3割近いですよ。

そこまでスポーツ嫌いじゃないじゃないですか。

なのにこう答えてるということは、単にスポーツが苦手とか嫌いとかじゃなくて、もうこちとら残業残業で時間的にも体力的にもとてもそんな余裕がないよという人が多いことの表れじゃないですか。この数字自体が。

単に嫌いとか苦手では済まない数字でしょ、これ。

なのに、時間がないなら通勤時間や昼休みに運動したらいいんじゃないですかって明るく言われちゃうんですよ。

どうしますか、この社会。

こういうことをやると、こういうキャンペーンを国が展開すると、必ず体裁を気にする経営者が無責任に導入する会社が出てきちゃいますよ。

「我が社も明日からウォークビズだ」とか言われちゃって、定期券取り上げられちゃったりして、「一駅歩いてこい」かなんか言われてとか、昼休みにみんなで、昔の工場みたいに、バレーボールやらされたりとか。

こういう会社出てきますよ。

だってクールビズだってそうじゃないですか。

結構多くの会社が、冷房の温度あげたりしてますから。

結構マジで怖いですよ。

勘弁してください。

余計なこと言わないでください。

これに比べたら、スポーツ嫌いの中学生を半分に減らすなんて政策は、まだましに思えちゃうんですよね。

だけど、これはこれで大いに問題があると思うんです。

何で中学生が目をつけられたかというと、小学5年生と比べて中学2年生の方がスポーツ嫌いな子が多いというデータが出たらしいんです。

小学5年より中学2年の方がスポーツ嫌いな子が増えるんですよ。

このデータ自体が、学校の体育教育が子供をスポーツ嫌いにさせてることの証明じゃないかと思うんです。

だってどんどん嫌いになっていくんだもん。

16%の人が小学5年の時は嫌いじゃなかったのに、中学2年では嫌いになってる。

それを8%に半減させるって言ってるんです。

なぜ嫌いになる人が増えるのかっていう原因を考えないで、だった減らすっていうわけです。

これね、小学校における体育の専科教員の導入を促進するとか、指導者の数を増やして質も向上させることで、さらなる体育教育の充実を目指してくるんですよ。

体育のせいで嫌いになってるっていうのに、体育を強化してくるんですよ。

そのための具体的な施策っていうのが、12項目も挙げられてる。

大人の4項目に対して12項目も挙げられてるんです。

気になったのは、その2番目の項目なんですよ。

「国は地方公共団体と連携し、武道を指導する教員の研修・指導者の派遣・武道場の整備等を通じて、中学校における武道の指導を充実する」とあるんです。

12項目の施策中、スポーツの具体的な種目名まで上がってるの、この武道だけなんです。

何でこんなに武道に力入れてるんでしょう。

誰かわからないですけど、特定の方々の意思とそれに対する忖度を勘ぐりたくなりますよね。

日本古来の武道をやらせて、精神を鍛えようみたいなこと言う人いるじゃないですか。

間違いなく、これはスポーツ嫌いの中学生を増やしますよね。

とにかくこの第2期スポーツ基本計画というのは、全体的に何とも気持ち悪い。

理由は、「嫌い」とか「やりたくない」を減らすべきっていう、間違った大前提に基づいているところが原因だと思うんです。

さらに「嫌い」とか「やりたくない」を減らすことが、教育とか促進だと信じて疑っていないんですよ。

これが、日本の政治と教育の一番の間違いだと思います。

教育とか促進ていうのは、好きなこととかやりたいことを伸ばすことでしょ。

嫌いなことややりたくないことをやらせることじゃないと思います。

それは訓練とか教練とかでしょ。

スポーツ庁は、スポーツが好きだったり、やりたかったり、得意だったりする人が、存分にスポーツできる環境を整えていればいいんですよ。

文科省は、勉強が好きだったり、やりたかったり、得意だったりする人が、存分に勉強できる環境を整えるべきなんですよ。

スポーツでも勉強でも、好きじゃなかったり、やりたくなかったり、苦手だったりする人に、やらせるっていうのは、それは教育でも促進でもなくて、かえって全体的なレベル下げるだけですよ。

なんかね、できないとか、やりたくないって言うのが許せないらしいんです。

それを無理やりやらせるのは、決して教育でもなければ、促進でもないと思いますね。

食べず嫌いっていうのもあるから、一度はやってみるのもいいけど、無理なものは無理です。