受動喫煙から子ども達を守る NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」
NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」今週のオピニオン6月9日放送
アナウンサー:受動喫煙は他人のタバコの煙を吸い込むことですよね。
その受動喫煙から子ども達をどう守るか。
これは重要なテーマですよね。
駒崎:WHOという国際機関の推計では、全世界で年間60万人の方がこの受動喫煙・他人が吸ったタバコの煙で亡くなっているんですんです。
日本では、厚労省の調査によると、年間1万5千人が亡くなっていると推計しています。
この割合というと、だいたい35分に1人他人の煙によって人が亡くなってしまっているということになります。
大人のみならず、子ども達にも大きく影響します。
実は受動喫煙によって子どもの突然死の確率が4.7倍にもなるという結果がわかったんです。
また、ぜんそくによる入院率も1.4倍から1.7倍になってしまうということで、非常に子どもの健康に影響を与える。
さらに、これは意外なことかもしれないですが、知能にも負の影響を与えるということが分かりまして、特に読解能力に大きく影響してしまうという研究結果がアメリカで発表されました。
つまり、体に悪いのみならず、知能にも悪いということで、子ども達の前でタバコを吸うのは児童虐待に等しいと、子どもは親を選べなくて、喫煙者の家庭に生まれたら、どうしても受動喫煙の被害者になってしまう。
子どもの人権的にもやはり看過できない問題なのではないかなと思います。
アナウンサー:日本には現在受動喫煙の防止を義務づける法律はありませんよね。
海外には、そうした観点での対策はあるんでしょうか。
駒崎:日本を除くすべてのオリンピック開催国では、受動喫煙防止法というのは成立しているという状況です。
さらに各国の場合、子どもに対しては屋内だけでなく車の中でも子どもに煙を浴びせてはいけないという規制がある国が多いです。
オーストラリアがそうですし、イギリスもそうです。
オーストラリアは、公園などから10メートル以内、子どもの遊具がある公園などから10メートル以内も禁煙、屋外も禁煙になっていたりするわけなんです。
そのぐらい子どもに煙を吸わせてはいけないということが徹底されているんです。
しかし、日本では公園でタバコは吸い放題という状況になっています。
アナウンサー:厚生労働省は受動喫煙対策として、飲食店などの建物の中を原則として禁煙にする法案の提出を目指していますけれど、自民党が規制基準の緩和を要望していて、駆け引きが続いています。
この議論をどのようにご覧になっていらっしゃいますか。
駒崎:オリンピック開催国としては、日本を除くすべての国が罰則付きの屋内禁煙を法制化しているのに対して、日本はいまだにその法律を提出すらできていないという状況は、大変由々しき問題かなと思い、非常に残念です。
なぜ屋内での受動喫煙対策が必要かというと、もちろんお客さんで吸いたくない人が吸わないようにするということも大事なんですけど、そこで働いている人達の健康を守らなくてはいけないということがあるんです。
中には妊婦さんもいるかもしれませんし、あるいはがん患者の方や受動喫煙の耐性が低い人などもいるわけですね。
そういう意味では単なる分煙というのは全く意味をなさないわけなんです。
アナウンサー:一方で公共の場での喫煙を法で規制することは、私的な権利を侵害するのではという声もあります。
どうお考えになりますか。
駒崎:先ほども言ったように、子ども達にとっては突然死のリスクが5倍になるということで児童虐待と同じなわけです。
ですので、児童虐待が家の中で行われた場合、家の中は私的な空間だから私的な空間に政府が口を出すべきではないというふうにはならないわけです。
なので、児童虐待を家の中でも外でもしてはいけないように、子ども達に関しては家においても車内においても、受動喫煙の被害を負わせてはいけないというふうになります。
アナウンサー:公共の場だけではなくて家庭内においても重要だということなんですね。
いま実際に子を持つ親の喫煙率は、どのくらいあるんですか。
駒崎:父親のおよそ4割、母親のおよそ1割が喫煙を続けているのではないかという調査結果がでています。
アナウンサー:この数字はどうお感じになりますか。
駒崎:非常に高いと思います。
やはり親になったなら子どもの前では一切吸わないということになります。
多くの人が思うよりもタバコの煙は子どもにとって危険なので、それはご両親はよく理解していただきたいと思います。
アナウンサ:受動喫煙対策としての受動喫煙防止法が議論されていますけど、どのような法律が理想だと考えますか。
駒崎:屋内は基本的に禁煙、そして子ども達に対しては家庭内でもあるいは車の中でも受動喫煙は禁止する。
そうあるべきかなと思っています。