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どう両立する 新政策と財政健全化 NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月7日放送

解説:神子田解説委員

 

アナウンサー:日本の経済財政運営と改革の基本方針をまとめたいわゆる「骨太の方針」の素案が先週末まとまりました。

その中では、子育て支援の財源の選択肢として初めて社会保険方式の活用が示されましています。

新たな政策が打ち出される中で必要な財源をどう確保して、財政健全化と両立させていくのか、神子田解説委員に聞きます。

今回の「骨太の方針」ですけど、最大のポイントは何でしょうか。

 

神子田:今回の「骨太の方針」の素案では、保育の無償化や待機児童の解消などを目指して安定財源を確保する方法を検討し年内に結論を得る方針を明記しました。

そして、その財源については、歳出の見直しなど財政面での効率化、増税、これに加えて新たに社会保険方式の活用が盛り込まれました。

 

アナウンサー:歳出削減、増税というのは分かるんですけど、保険というのはどういうことですか。

 

神子田:一言で言いますと、公的年金などのように働く人や企業からの社会保険料に上乗せするかたちで徴収して、子育て世帯の負担の軽減に充てるものです。

自民党の小泉進二郎議員を中心とする若手議員らが提唱する具体的な仕組みは、このようになっています。

まず第1次段階では、給与所得者と勤め先の企業からそれぞれその人の賃金の0.1%ずつの保険料を集めます。

国民年金の加入者の場合は、月160円を徴収します。

こうして3400億円の財源が確保できることになります。

この財源を使って、児童手当を1人当たり5000円増やすことができるとしています。

そして、最終段階では、給与所得者と企業、国民年金の加入者の拠出する額を約5倍にして、これによって財源を1兆7000億円まで増やせるとしています。

この場合、たとえば小学校に入学する前の子供がいる世帯には、子ども1人当たり25000円を支給できるようになると言います。

幼稚園や保育園にかかる費用は平均で1月当たり1万円から3万円程度なので、従来の児童手当と合わせると、幼児教育や保育を実質的に無償化できる計算です。

この方式は、今必要な政策に必要な財源を借金に頼らずに今の世代で手当てするという点では評価できます。

 

アナウンサー:今の方法ですと、独身世帯あるいは小さな子供がいない世帯にとっては、社会保険料の負担が増えるだけということになりかねませんよね。

 

神子田:おっしゃる通りです。

負担が増えるだけです。

それは不公平だという指摘があります。

さらに社会全体で負担すると言いながら、高齢者から徴収しないのも疑問だという声も出ています。

そこで、子育て支援に必要な財源は、より公平に負担を求めることができる消費税の引き上げによって賄うべきだという議論が出てきています。

しかし、消費税を10%に引き上げることがすでに2回も延期されています。

子どものための財源を確保するために、消費税を10%からさらに引き上げるのは容易ではありません。

 

アナウンサー:さらに教育をめぐっては、安倍総理大臣が目指している大学・専修学校などの高等教育の無償化も抱えていますので、それも実現するとすると、巨額の財源が必要になりますね。

 

神子田:そうですね。

そこで政界の一部からは、教育に必要な財源は国債を発行して確保すればよいという意見も出てきています。

今借金をしてお金をかけても、将来その人が有為な人材となって国に税金を支払うかたちで帰ってくるという考え方によるものです。

しかし無償化によって高等教育の機会を得た人材が将来どのくらい追加的な税収をもたらすのかは不透明です。

また、将来世代へツケを先送りするだけということにもなりかねません。

今の日本の財政は、国と地方の借金の総額がGDPの190%にも上るほど悪化しています。

今の社会をよくするために取らなければならない政策があれば、その必要性について国民に丁寧に説明し、理解を得たうえで、今の世代から税や保険料というかたちで徴収していく、政府がこういう姿勢を貫いて財政政策に臨んでいくのか、私たちも見ていく必要があります。

 

アナウンサ:今日のニュース解説は、いわゆる「骨太の方針」の中に盛り込まれた子育て支援の財源の選択肢についてでした。