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キッズ・ウィーク 誰のためか? NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月14日放送

解説:「くらしと仕事」編集長やつづかえり;竹田忠解説委員

 

 竹田:今日は、小学校・中学校・高校に通う子供達、そしてその家族にとって大変大きな影響が出て来るだろうというニュースです。

それは、来年から夏休みが減るかもしれない、キッズ・ウィークとは何なのか、誰のためなのかというテーマでお送りします。

キッズ・ウィークとは何なのか、簡単に言いますと、小学校・中学校・高校の夏休みを数日から1週間程度短くして、その分を別の季節・別の時期にずらして、そこに元々ある土日や祝日と連結させて、ゴールデンウィークをもう一つ、どこかに作る。

そういうイメージなんです。

それは、国が地方に要請して、どこにするか各地域で決めてもらう。

親はそれに合わせて、会社で有給休暇を取って、大人も子供もできるだけ一緒に休めるようにするというものなんです。

問題は、いつからやるのかというと、2018年度から。

来年春からですよ。

と、設定すると政府が閣議決定した骨太の方針に明記されてるんです。

そんなこと聞いてないよ、という方も多いと思うんです。

このキッズ・ウィーク、働いてる方に有給休暇をもっと取得してもらおうと、そのきっかけにしてもらおうというのが大きな狙いなんですが、政府の直近の調査で、労働者が自分の持っている有給休暇をどれだけ取得したかという有給取得率は平均でおよそ50%です。

来年から夏休みが変わるかもしれないとなると、子供を持つ家庭の親御さんたちは大変な話になると思いますが、この話を聞いてどう思われましたか。

 

やつづか:キッズ・ウィークという言葉自体が、突然出て来た感じがして、名前のとおり親子の時間を増やすため、子供のためという文脈で、国からは語られているんですけど、内容を聞きますと、先日始まったプレミアム・フライデーにように、働く人の休みを増やすための動きなのかなというふうに感じました。

 

竹田:キッズ・ウィークというのは、子供にとってはいい話なんでしょうか。

このように、夏休みを分割するのは。

 

やつづか:それは、家庭環境ですとか、その地域の環境にもよると思います。

夏休みに比べて、その地域ごとにキッズ・ウィークが出来た時に、混雑しない期間にゆっくり家族で過ごせるですとか、あるいは家族が仕事に行っていたとしても、子供が参加できる地域の有意義な活動に行けるとか、そういうことがあれば、子供にとってはいいことだと思います。

ただ、そういう機会に恵まれない子供も少なくはないと思いますので、そうなると、単純に夏休みは短くなり、キッズ・ウィークの間は一人で留守番しなければいけないということで、寂しい思いをする子も多いんじゃないかなと思います。

 

竹田:簡単にみんながみんなハッピーというわけにはいかない可能性があるわけですね。

一方で、大人にとっては、これはどうなんでしょう。

 

やつづか:これも働く職場次第かなと思っていまして、柔軟に休みが取りやすい職場で働いている人であれば、今までであれば子供の休みに合わせて夏休みを取るとなると、どうしても混雑している期間に休みを取ってってなっていたところが、キッズ・ウィークの間、休めるというのはメリットだと思うんですが、そうでない職場も多いですよね。

そうなると、メリットは特にない、あるいはむしろ共働きの家庭であれば、キッズ・ウィークで子供が休みの間、その子供をどうしようというところ、預け先なんかをかんがえないといけなかったりすると、逆に負担になってしまったりしてしまうかなと思います。

 

竹田:子供がいる・いないで差が出て来るわけですね。

 

やつづか:子供がいない人にとって、何のメリットもないじゃないかという意見もあるんですけど、もしこのキッズ・ウィークの施策を受けて企業の側が、もっと有給休暇を取りやすいようにしましょうというふうに動くのであれば、それは子供がいない人にとっても、休みが取りやすくなるという意味で、メリットがあると思います。

 

竹田:先ほど紹介したように、せっかくの有給休暇を半分しか取れていない状況を改善するためには、キッズ・ウィークだろうが何だろうが、新たにこの期間に自分は有給休暇を取りますと言いやすくなれば、ということですね。

 

やつづか:そういう方向に行けば、メリットはありますね。

 

竹田:例えば、ひとつ大きな流れは、そうやって親御さんたちの有給休暇をできるだけ取りやすくするというのがあって、もうひとつはずっと前からある流れですけど、休みを分散化させるというのがあったわけですね。

ゴールデンウィークと同じような休みをどこかで作れないか、一時期シルバーウィークと呼んで、別の時期に大型の連休を設定して、というような構想もあったりしたんですけど、休みの分散化ということは、他の国ではどうなっているんでしょうか。

 

やつづか:過去に日本が休みの分散化を構想した時に参考にしていたのが、ドイツやフランスでした。

ドイツでは、祝日ですとか学校の長期休みが州ごとに異なります。

フランスの場合は、国全体を三つのゾーンに分けて、学校の春休みと冬休みに時期をずらすという政策を取っています。

 

竹田:それに合わせて企業や地域がみんなで休みをエンジョイできるようにすると。

 

やつづか:フランスの場合、学校の休みをずらしましょうという策なんですけど、当然学校が休みだとお父さんお母さんもそれに合わせて長いバカンスを取るという習慣がありますので、それによって全体的にお休みの時期がずれるというようなかたちになっているようです。

 

竹田:まさに今回のキッズ・ウィークと同じように、まず学校の休みを分けて行って、そこで親御さんたちも休めるようにすると。

 

やつづか:フランスやドイツは、働く人も長い休暇を取る習慣がありますので、その休む時期をずらすことで、混雑しないメリットが得られるということで、受け入れられている制度なのかなと思います。

 

竹田:そういう流れを参考にしながら、これまでどういう検討というか構想を出してきたわけですか。

 

やつづか:民主党政権時代、2010年ごろですかね、休みの分散化ということで、ゴールデンウィークの時期を解体するようなかたちで、地域ごとに違う時期に連休を取れるようにしようという案が作られていたこともあるんですけど、そこを具体的に詰めて、いろいろな会議を進めていたんですけど、震災があったりですとか、その後政権が交代したりして、その案は無くなってしまったという状況ですね。

 

竹田:そのイメージからすると、今回のキッズ・ウィークはどうなんですか。

 

やつづか:前の案の方が、本当に全体で、学校だけではなく祝日自体を地域ごとに変えてしまうということだったので、もしそれがうまく導入できれば、強制的にみんな休みのやすかったかもしれないんですけど、今回は学校の休みがあり、それに合わせて、企業が有給を取らせるかどうかは企業次第なのかなというふうに思います。

 

竹田:今回は別に休みが増えるというわけではなく、今ある学校の休みを何日かずらすということですね。

そこに合わせて企業が有給休暇が取れるようにしてくださいねということなので、別に祝日が増えるとか、休日が増えるという、そういう話ではないんですね。

 

やつづか:トータルでは変わらないということですね。

 

竹田:結局、まずは働いている人が有給休暇を取りやすくするというのが、ないといけないわけですね。

 

やつづか:そうだと思います。

 

竹田:何がこれだけ難しいんでしょうか。

なぜ半分しか有給休暇が取れないんでしょうか。

 

やつづか:ひとつは、私も社会人になった時に先輩に言われた記憶があるんですが、日本人は有給休暇がというものを病気やケガなど万が一の時のためにとっておくもんだよという意識が高いのではないかと思います。

なので、使い切ってしまえないですね。

今は取っておくものではなくて、リフレッシュや家族と過ごすために使うものに、発想を転換してほしいというのが今回の施策の裏にある国の考えだと思いますけど。

 

竹田:海外では、病気の時の休暇があったりするんですよね。

 

やつづか:そういう国もあるんですね。

ですので、病気のためとか、万が一の休暇というのが別であって、それ以外に付与されている有給休暇があるということであれば、もうちょっと使いやすいかもしれないですね。