アメリカイージス艦衝突事故原因究明は進むのか
キャスター:アメリカ海軍のイージス艦フィッツ・ジェラルドとフィリピン船籍のコンテナ船が衝突した事故で、海上保安庁が事故の捜査を始めています。
しかし、日米地位協定によって、イージス艦の捜査は、アメリカ側に優先権があるためどこまで原因が究明できるのか見通せない状況です。
瀬谷解説委員に聞きます。
今回の事故なんですが、原因はどんなことが考えられるんでしょうか。
瀬谷解説委員:この事故の素朴な疑問なんですけど、大きな船同士がなぜぶつかってしまったのか、という点です。
イージス艦フィッツ・ジェラルドは全長154メートル、そしてコンテナ船の方は全長222メートルと、双方非常に大きいので、衝突の直前までお互いの存在に全く気づかなかったということは、考えにくいのではないかと思います。
事故が起きた現場は、行き交う船舶が非常に多い海域であると考えますと、単純にこの2隻が衝突したのではない可能性、つまりこの2隻以外にも、どちらかの船の航行に何らかの影響を与えるような船が他にいなかったかどうか、そういった点も調べる必要があるのではないかと指摘する専門家もいます。
いずれにしろ、まだわからないことがたくさんありますので、現場で何があったのか、というのを徹底的に調べる必要があります。
キャスター:その調べはうまくいきそうなんでしょうか。
瀬谷解説委員:そこが不透明でして、衝突の原因究明というのは、双方の当事者から話をよく聞いて、衝突に至るまでの状況を、正確に把握する、ということが基本です。
事故が起きたのは、日本の領海内ですので、捜査の権限は本来、日本の海上保安庁や国の運輸安全委員会にあるわけです。
コンテナ船については、通常通りの調査や操作が行われていますけれども、アメリカ軍の船については、日米地位協定の規定で、優先的な捜査権がアメリカ側にありますから、海上保安庁は、アメリア側の了承なしに乗組員を事情聴取したり、船体の破損部分を詳しく調べたりすることができません。
これについて、アメリカ海軍第7艦隊の司令官が記者会見で、事故の捜査は今回特別に設置したアメリカ海軍の捜査チームが行う、と強調する一方で、日本の捜査にも協力する、と述べました。
キャスター:ということは、捜査に協力は得られるということですか。
瀬谷解説委員:そうとも言えない面が実はあるんです。
一定の情報提供などの協力は得られる出しょうけど、問題はどこまで協力してもらえるかということです。
過去の例ですと、アメリカ軍の船へのアクセスが認められなかったケースが何度もあったんです。
今回も、最も損傷が激しい部分は、イージスシステムの高性能レーダーなどの軍事機密が集中する場所ですので、日本側が直接調べるのは難しいのではないかという見方もあります。
アメリカ側の調査結果を教えてもらうことはできますけど、事故の一方の当事者を自ら十分に調べられなければ、本当の意味で真実にたどり着けない可能性もあります。
軍事機密以外なら見せても構わない部分はあるはずです。
日米同盟の重要性を唱えるなら、アメリカには事故原因究明のための一歩進んだ協力というものを見せてもらいたいと思います。