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ニュース解説 小池都知事 豊洲移転に判断 

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月20日放送

解説:合瀬解説委員

 

キャスター:築地市場の存続か豊洲への移転かで注目されていた市場の将来像について、と京都の小池知事は、市場を豊洲に移転したうえで築地にも市場機能を持たせた再開発を行う基本方針を公表しました。

両方とも生かすということなんですね。

 

合瀬解説委員:そうですね。

小池知事は、築地は守る、豊洲は生かすとして、まずは豊洲に移転して、改めて中央卸売市場としての機能を持たせたうえで、築地についても再開発して、5年後をめどに食をテーマにした一大拠点とする基本方針を示しました。

 市場としての機能は豊洲・築地両方に持たせて、豊洲については冷凍・冷蔵・加工などの機能を一層強化してITを活用する物流拠点として整備する。

そして築地については、長年培ったブランド力、そして地域との調和を生かして、改めて活用することが大切なたからを生かす方法だとしています。

事業者はいったん豊洲に移転するものの、その後は事業者が市場を選べるとしまして、移転推進派・築地残留派どちらにも配慮したものになっています。

 

キャスター:どちらにも配慮したというのは、都議会議員選挙を前にした判断ということも言えるかもしれないんですけど、なぜこうした判断となったんでしょうか。

 

合瀬解説委員:小池知事が会見で強調していたのは、豊洲市場の将来性に対する危機感なんです。

豊洲市場の整備におよそ6000億円かかりました。

しかしそれ以上に、敷地4千ヘクタールの巨大な設備にかかる光熱費だとか施設の警備費などの維持費に巨額の費用が発生しまして、一方で市場を経由する水産物はどんどん減っているわけです。

市場会計の赤字は年間150億から160億円に上ると東京都の市場問題プロジェクトチームは指摘していたんです。

これまで東京都は、移転した後の築地市場を民間におよそ4500億円で売却して、この赤字を穴埋めするとしてきたんですが、そうした措置を取っても31年後にはたくわえすべて吐き出して、市場会計は資金不足に陥ると。

膨らみ続ける赤字を埋めるためには、結局都民の税金を投入する事態になりかねないというふうにしていたんです。

 

キャスター:税金を投入するということに対しては、異論も出て来るんではないでしょうか。

 

合瀬解説委員:では、豊洲に移転せずに築地市場を改修して使うのかというと、様々な問題があったわけです。

営業しながらの改修には時間がかかりまして、なにより業者間の調整が困難で、過去には頓挫した経緯がありました。

すでに完成した豊洲に一旦市場を移転して、その間に築地市場を改修することができれば、築地市場も存続することができるわけですね。

小池知事は常々、築地には世界に誇るブランド力を持っているというふうにしていまして、そうしたことを考えて、市場機能を一旦豊洲に移転するものの、築地市場も再整備して、もう一回戻ってくる、そうしたことを検討することを考えたというように思います。

 

キャスター:築地も豊洲も両方とも活用するというと無駄なところもあるんじゃないかと思うんですけど、問題点はないんですか。

 

合瀬解説委員:たくさんあると思います。

いまおっしゃったような、まずは資金面ですよね。

今回の基本方針、豊洲も築地も両方とも存続させるということになりますと、まず豊洲市場の整備に6000億円かかっているんですね。

それに加えて、築地を再整備するとなると、投入される整備費は800億円から1000億円に上るとされています。

ただでさえ市場の先行きが不安だと言ってるのに、さらに巨額の投資をして、本当に大丈夫なのかということがひとつですね。

また事業者の合意をどう取り付けるかということだと思います。

築地の事業者は豊洲に移転すると去年の11月になってましたから、合わせて300億円ほどの投資をしてるんです。

もう一回築地に帰るということになると、さらに資金が必要でして、移転賛成派・築地残留派が対立する中で、本当に意見を一本化できるのか、その移転費用をどうするかとかも問題ですね。

豊洲市場築地市場を両立させた場合に、当然業者も両方に分かれるということになりかねません。

そもそも築地ブランドというのは、日本国内だけでなく世界各地から水産物が集まって、それを業者が品定めする、そうした目利き、つまり人についてるわけです。

その賑わいから生まれたものなんです。

それが二つに分かれるとなると、築地ブランドという魅力が半減しないのか、そこも検討しなければならない課題だと思います。