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話が違うぞ!マイナンバー

TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ」6月21日放送

トークファイル  渋谷和宏

 

森本:話が違うぞ!マイナンバー、ということですが、マイナンバーに何がありましたか?

 

渋谷:マイナンバーってそもそも行政サービスが受けやすくなるとか、行政サービスにかかるコストを下げるとか、そういう趣旨でやりますよというはずだった話がですね、どんどん趣旨と逸脱した方向に使われ始めようとしているんですね。

6月20日のIR(統合型リゾート)に関する政府の有識者会議でですね、ギャンブル依存症対策にマイナンバーを活用しようという、そういう案が出て来ました。

これはですね、日本にカジノができたとします。

このカジノに入る時に、マイナンバーカードを提示して本人確認をすると。

こういう仕組みを導入しようということなんですね。

そうすると、このマイナンバーカードに、カジノに何月何日どれくらい行ったかというのが記録されていくと。

そこで、週単位・月単位で何回以上入ってはいけません、という上限を設けることで、もう上限を超えちゃうと入場できないようにしようと。

つまり、依存症の人は入れないようにしようというですね、こういう上限を設けるという。

こういう取り組みをやろうということなんですね。

問題なのは、それに加えて、マイナンバーカードに、過去に依存症と診断されたことがあるかどうかとか、依存症の疑いがあるかとかですね、そういった記録も入れちゃおうと。

過去に依存症と診断されたことがある人は、そもそも入場禁止にするというとかですね、こういうギャンブル依存症対策に活用しようという案なんですけど、まずマイナンバーカードに、何度カジノに行ったかが記録されるとか、あるいは依存症か否かの既往症が過去にあったかどうかとかですね、そういうデータを入れるというのはですね、これはそもそもの趣旨とは違うんじゃないかと。

本人の極端にいうと病歴がそこに入るということです。

これってどうかという話です。

加えてこのカジノというのは、外資も含めた民間の企業が運営するという方向で検討されているわけで、民間企業にマイナンバー情報が入っていくということになってしまいます。

行政がしっかり管理するから安全です、という説明を受けていたはずなんですが、これが民間企業にどんどん公開されていくようなことになるとですね、マイナンバーが流出してしまうんじゃないかというリスク、不安、これは拭えなくなりますよね。

これはちょっとどうかなと、話が違うぞという印象を受けたということです。

もちろん、マイナンバーの利用は、法令上これとこれとこれに限定しますよというふうに書かれています。

ですので、これをギャンブル依存症対策に利用するということになると、当然法改正が必要になりますので、国会でそれを議論するということになりますけど、数で与党が増してますので、このまま国民の合意をきちんと得られないままにですね、拡大されていくリスクはやっぱりあるわけですよ。

これはもっと議論しないといけないんじゃないかと思いました。

 

森本:マイナンバーの拡大利用は、まだ他にもあるんですか?

 

渋谷:先週報じられたんですけど、マイナンバーを普及するために、LINEと提携するという、こういう向きが出て来ています。

これは具体的には、6800万人のユーザーがいるLINEを使って、マイナンバーのポータルサイトがこの秋から本格的に動き出しますけど、マイナポータルですね、個人向けにいろんな専用サイトがあって、そこで個人の情報を確認できるというですね、このLINEからマイナポータルに簡単に飛べるようにする、こういう仕組みを作ろうという、こういう動きが出て来ました。

LINEをやっている人に対して、マイナポータルってこんなことができますよというようないろんなサービスを紹介します。

これは面白そうだな、ということでそこをクリックすると、マイナポータルにアクセスできるというですね、民間のLINEを使ったマイナポータル普及策ですね、こういう動きも出て来たというところですね。

 

森本:これはどうなんですかね。

これも一見便利そうではありますけどね。

 

渋谷:マイナポータルにアクセスするのは、なかなか大変だ、というふうに言われていますので、LINEユーザーは簡単にここに行かれるという点では、便利になりますけれど、かつLINEからマイナポータルに入った時には、LINE側にはマイナンバーは残らない、というふうには言ってるんですが、やっぱり民間企業が間に介在するということで、情報漏洩大丈夫かな、という。

LINEのやりとりが流出したなんていうこともあるわけですよね。

その心配がやっぱりあるなというふうに思いますね。

むしろ、そんなことではなくて、マイナポータルに簡単に入れるようにすればいいのに、と思うんですね。

しかし6800万人のユーザーを活用したいという、こういう動きですね。

マイナンバーカードってまだ5月15日時点で普及率が9%に過ぎないので、なんとか民間の力を使って、拡大しようというですね、そういう焦りを感じます。

 

森本:民間に民間にっていう考え方が、ちょっと怖いですよね。

 

渋谷:怖いですよね。

そもそもは、繰り返しますけど、行政サービスが受けやすくなりますよというですね、その結果として行政コストも下がりますと、こういう趣旨のはずだったわけです。

ところがこれを、どんどん拡大して民間に、ということになっていくと、そこには当然利権も生まれるし、それから情報漏洩のリスクも生じるし、どんどんこの話のマイナンバーの趣旨からですね、ずれてるな、という印象が強いんですよね。

ですからここは、きちんと議論をしてほしいなというふうに思います。

 

森本:これから先、いろいろこういった拡大利用は増えてくる危険性がありますもんね。

 

渋谷:そうですね。マイナンバーカードを持ってると、マイルがたまるとかですね。

そういったクーポンにつながるとか、そういったこともやろうとしていますので、なんか違うなという違和感が大きいですね。