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土砂災害危険箇所 指定と対策を急げ

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月22日放送

解説:松本解説委員

 

キャスター:北海道と沖縄を除いて全国的に梅雨入りし、豪雨災害に対する警戒が必要な時期になりました。

このうち土砂災害に対するついては、3年前の広島の災害を受けて、危険な場所を指定して住民に早めの避難をしてもらう体制づくりに力が入れられています。

対策は進んできたのか。

松本解説委員に聞きます。

広島の土砂災害、大変大きな災害だったんですが、この災害をきっかけに対策が少し変わりましたよね。

 

松本解説委員:これまで土砂災害の危険のある場所を指定をして、そこで避難などの対策を進めるというやり方をしてきたんですけど、これが思うように進まない。

そこで広島の災害を受けて、危険な場所だということがわかったら、すぐに公表すると、公表を先にするというふうに変わったんですね。

もう少し詳しく言いますと、土砂災害防止法という法律に基づいて、危険のある場所=警戒区域、もっと危険のある場所=特別警戒区域、の2段階に指定するんですね。

そこでは、開発を規制したり、あるいは市町村が避難場所・避難ルートを作る、これが義務付けられていてですね、それから高齢者施設・子供のいる施設でも避難計画や訓練が義務付けられるなど、様々な対策がとられるんですね。

いわゆるソフト対策を中心に被害を防ごうというものなんですが、指定が思うように進んでいないという面もあるんです。

対象は全国におよそ67万箇所あるんですが、指定が済んだのは4分の3の49万箇所というのが現状なんですね。

 

キャスター:私も取材したことありますけど、時間がかかっているのは調査がなかなか進まないからなんですか。

 

松本解説委員:数が膨大で調査に時間がかかる、調査するとさらに対象の箇所が増える、というようなこともあって、時間がかかるということもあるんですが、ひとつ大きいのは、指定をされると地価が下がるなどとして、住民が反対する場合があって、そうした声を受けて、市町村長が了解をしにくいと。都道府県が指定をするんですけど、市町村長に説明する・意見を聞く必要があってですね、そこがネックになっているという状況があるんですね。

そうしたなか、苦労しながら進めてなかなか進まないという状況のなかで、3年前の広島の土砂災害が起きてしまったんですね。

この災害で非常に大きな被害を受けた安佐南区の二つの地区があるんですが、ここでは実は、調査が終わって危険な場所であるということはわかっていたんですね。

特別警戒区域などに相当するということはわかっていたんですが、まだ指定されていなかったと。

住民に危険が知らされていなかったんです。

この教訓から、国は、様々な手続きが必要ですけれども、調査が終わったらすぐ、「危ない」と、そういう地域であるということを公表しましょうと、公表することを都道府県に義務付けたんですね。

市町村長からの意見聴取とか住民説明の前にまず、危険があることを知らせるようにしたんです。

 

キャスター:その成果というのは上がってきてるんですか。

 

松本解説委員:基礎調査はこれまで22の府県で終わって、順次公表が進められてきました。

例えば新潟県、先月の末で全部公表が終わったんですけど、反対する市があったんですね。

しかし、その反対を押し切るかたちで県内全域の危険箇所を指定したという状況です。

残り45都道県あるんですけど、3年後までに完了するということになってるんです。

広島の教訓を受けて、まず公表するということは進んできたんですけど、対策はそれがある意味スタートですよね。

指定されて、そこから避難計画を作ったり訓練をしたり、ようやくこれで動き出すということで、やはり警戒区域や特別警戒区域の指定もきちんと進めていく、急ぐ必要があると思うんですね。

どうするか、というところですけど、やはり市町村の側、住民の側にも、いろいろ事情がありますよね。

ですから、都道府県は市町村や住民に対して丁寧に説明を重ねる、これに尽きると思うんですね。

説明のしかたもですね、住民を集めて説明会を一方的にやるんじゃなくて、一定の時間会場で、いつでもいいですから来てくださいと、そこで市町村や県の職員が待っていて説明をすると、そういう方式を取るところが広がっていたりですね、10ぐらいの県に広がっていて成果を上げていて、そういうやり方というのも参考になると思うんですね。

それから特別警戒区域、一番厳しいところに指定をされると、規制もかかるんですけど、一方で建物を補強する補助の制度というのも受けられるようになるんですね。

これに県独自で工夫をしているところもあってですね、こういう制度を充実させ利用を促すというのも検討が必要なんだと思います。

土砂災害はこの10年を平均すると毎年1000件起きているということなんですね。

ですから国としても遅れている地域を後押しするように支援を続けてもらいたいと思います。