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加計学園問題 丁寧な説明は

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月26日放送

ニュース解説

解説:西川解説委員

 

キャスター:学校法人加計学園獣医学部の新設をめぐる問題、文部科学省の新たな文書の存在が明らかになるなど、国民の疑問は一向に解消される気配はありません。

先週の金曜日、文部科学省の前川前事務次官がまた記者会見を開きましたよね。

この会見、どこに注目されました。

 

西川解説委員:今回の前川氏の会見で最も注目したのは、国家戦略特区制度で、愛媛県今治市加計学園獣医学部の新設が認められたことに関連しまして、この問題を、規制改革派と抵抗勢力という勧善懲悪的な見方をするのでは、事の本質を見誤る。

無意味な規制は思い切って撤廃するのは当然のことで、ただそれがきちんとした検討や検証の結果として判断しなければならないと思っている。

こう述べたことなんですね。

 

キャスター:そのどこに注目されたわけですか。

 

西川解説委員:一連の問題で、前川氏が一貫して主張しているのは、獣医師の数は十分足りているとされることなどから、半世紀以上認められてこなかった獣医学部の新設にあたって、一定の条件がクリアされないまま、規制緩和が進められたということなんです。

そこに、何らかの政治的な意向が働いたのではないかという疑問が、文部科学省から次々出て来る文書の存在によって、国民の間に大きく膨らんでいるという状態です。

この疑問を突きつけられた一方の当事者である内閣府それから官邸ですね、それが払拭するために当事者意識を持って対応していないのではないかと、いうのが前川氏の考えです。

 

キャスター:その文部科学省からは、先週も新たな文書が出てきましたよね。

 

西川解説委員:これは、去年10月21日、萩生田官房副長官文部科学省の高等教育局長と面会をしまして、官邸や内閣府の考えを伝えた発言をまとめたとされるものなんです。

この文書は、今回の問題を担当しています専門教育科の共有フォルダの中にあったということなんですが、これまで文部科学省は、2回の調査を行なっていますけども、これでは見つかっていなかったんですね。

文部科学省は、調査の対象が、国会で民進党などから問題とされた19の文書に限られていたため、と説明していますけど、疑問に本気で答える気があるのか、と思われても仕方がないように思います。

 

キャスター:そうした疑念を払拭するために、何が求められるんでしょうか。

 

西川解説委員:安倍総理自身が、国会終了後の記者会見で述べた、「一連の問題で疑問が生じれば、国民に誠心誠意説明を尽くす」ということです。

責任を文部科学省だけに負わせるには限界があります。

より重要なのは、国家戦略特区を担当する内閣府側の対応にあります。

先月15日に文部科学省が、「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書が見つかった、と発表した後、内閣府は、「そうした発言をした職員はおらず、それを裏付ける文書も見つからなかった」とする調査結果を、翌日発表しています。

しかし調査の対象は、9人の職員で、1日だけの調査で結論付けてるんですね。

文部科学省側と言い分が食い違ってる状況にもかかわらず、こちらも再調査の必要はない、と言います。

 

キャスター:この話というのは、新たな文書が次々に明るみに出るなど、状況が日々変化しているわけですよね。

それに対応していないようにも思えるんですが。

 

西川解説委員:そうした省庁間で見解が異なるということであれば、それぞれの省庁だけではなく、前川氏が先週の会見で求めたように、第三者機関を設けて、徹底した調査を行う、という方法もあるはずなんですね。

安倍総理大臣なんですけど、一昨日神戸市で行なった公演の中で、「国家戦略特区での獣医学部新設を1校だけに限定して認めたことが、国民の疑惑を招く一因だった」としまして、新設をさらに認める方向で検討を進める考えを示しました。

しかし、そのことで国民の疑念が払拭されるとは思いません。

同じ公演で総理自身が述べた、「疑念が示されれば、担当大臣を筆頭に、積極的に情報公開し、しっかりと説明する」そのことを国民は求めていると思います。