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敵基地攻撃能力保有に前進か 自衛隊の戦闘機に空対地ミサイル装備を検討

TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ」6月26日放送

コメンテーター:青木理

 

政府が航空自衛隊に配備予定の最新鋭ステルス戦闘機F35に、遠く離れた地上の敵を攻撃できる空対地ミサイルを導入する方向で検討に入ったと、6月26日の読売新聞が伝えています。

自衛隊への導入は初めてとなり、2018年度予算に関連経費の計上を目指します。

国内の離島で有事が起きた際に備えるのが狙いですが、自衛のために相手国の基地などを攻撃する敵基地攻撃能力の保有を念頭に置いている、という見方もあります。

このミサイルは、F35の国際共同開発に参加したノルウェーが開発中の、ジョイント・ストライク・ミサイルと呼ばれるものです。

海の上の艦船を狙う空対艦とともに航空自衛隊が現在保有していない空対地の能力を併せ持っていて、射程は300キロメートルです。

高度なステルス性を備えたF35と長距離射程の空対地ミサイルを組み合わせれば、実質的には他国の基地を攻撃するための運用も可能となります。

この敵基地攻撃能力というのは、憲法上は認められているということです。

ただ、専守防衛の観点から、政策判断として保有しないというのが政府のこれまでの立場でした。

もし空対地ミサイルが導入されれば、中国や韓国など近隣諸国の反発は必至とみられます。

読売新聞によりますと、北朝鮮が核やミサイル開発を続け、挑発行為を繰り返す中、抑止力向上のため、敵基地攻撃能力の保有を求める声は、高まっていると伝えています。

 

荒川:政府としては、離島の防衛が主な目的だと言ってはいるんですけどね。

 

青木:先日の安全保障関連法制で集団的自衛権の行使を一部容認するというのと同じかもしれないですけど、専守防衛というこれまでの立場からすれば、日本の安保政策の非常に大きな変換でありますし、周辺国も含めた外国から、そういうふうに見られても仕方がないことですね。

これまでの経緯を言うと、次期中期防衛力整備計画をこれから政府が作るんですけど、自民党の安全保障調査会が中間報告によると、敵基地攻撃能力の検討を迅速に開始するよう求めています。

自民党は、そういうふうに言ってるんですね。

自民党は、3月にも敵基地攻撃能力の検討を政府に求めているわけですね。

それを受けて、政府が今後5年間の主要装備の目標を示す次期中期防衛計画が本格化するんですけど、それに合わせたかたちで、こういうふうに読売新聞にこういう記事が出てきたということになってくると、離島の防衛ということを言っていても、敵基地攻撃能力は憲法上は認めているんだけど専守防衛の立場から持たないとしていたものが、敵基地攻撃能力を持つように舵をきったんだと、内外ともに見られても仕方がないと思います。

僕は、この敵基地攻撃能力を持つ持たないの議論が、ある種の机上の空論に思えて仕方がありません。

日本の場合、対象とするのは、北朝鮮、中国、ロシアなどかもしれませんが、当面は北朝鮮ですよね。

しかし、世界の軍事費の3分の1以上を占めるアメリカですら、先制攻撃・敵基地攻撃をできないと言っている。

なぜなら、その瞬間に北朝鮮がどうなるかということのリスクを考えると、徹底的にやらないと、韓国に向いている武器などを徹底的に全部ぶち壊して、場合によっては金正恩氏あるいは政権中枢部を叩く、そして核実験をしている施設や中距離ミサイル・長距離ミサイル施設も徹底的に叩かないと、危なくてしょうがないから。

そんなことができるのかと言って、アメリカですら躊躇するような状況なのに、日本が敵基地攻撃能力を持って何に使うのという感じがするんです。

自民党の安全保障調査会の中間報告では、敵基地攻撃能力に合わせて弾道ミサイルの防衛能力も増強すると、つまり韓国の導入されて問題になっているTHAADの導入も提案しています。

まさに戦後日本の防衛体制・専守防衛のあり方の根本的な転換になります。