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対北朝鮮圧力強化 鍵を握る日中関係

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月27日放送

解説:増田解説委員

 

キャスター:核やミサイルの開発を続ける北朝鮮が挑発をやめようとしません。

日本は今は対話ではなく圧力を強化すべきだ、として北朝鮮に対する国際的な包囲網と制裁の強化を目指しています。

そのうえで、圧力に実効性を持たせるためには、中国の協力が欠かせない、と見て対中関係の改善を模索している、ということです。

政治外交担当の増田解説委員に聞いていきます。

北朝鮮のミサイル発射、今年に入ってすでに10回を数え、こういった北朝鮮の挑発に日本政府は今、どう対応しようとせているんでしょうか。

 

増田解説委員:日本政府は、平和的な解決を模索してきた対話の試みは、北朝鮮による時間稼ぎに利用された、今国際的な無法状態が常態化している、と危機感を強めています。

そして、今は対話でなく、圧力を強化すべきだとして、国際的な包囲網と制裁の強化を目指しています。

政府は今日(6月27日)の閣議でキャッチオールという新たな制裁を決めました。

これは、北朝鮮に向かう第三国の船舶が積んでいる核やミサイルの開発につながるおそれのある全ての貨物の押収を可能にするものです。

北朝鮮が第三国との間で輸出入をする貨物で、日本の港や領海を経由するものについては、現在、あらかじめ規制対象に指定した品目が積まれていると認められる場合に、海上保安庁や税関で、検査や押収をすることができるとされています。

ただ、北朝鮮は、規制対象となっている品目、例えば兵器などを分解して原材料や機械部品として運搬するなどの工作を行なっているとされ、制裁の抜け穴になっているという指摘がありました。

このため、あらかじめ指定された品目以外でも、押収することを可能にしたのが、キャッチオールというわけです。

 

キャスター:このキャッチオールで、日本は制裁を強化したと、圧力を強めたということなんですが、ただ、日本一国だけでやるといっても、限界がありますよね。

 

増田解説委員:その通りです。

政府は圧力強化の鍵を握るのは、北朝鮮の最大の貿易相手国中国だと見て、働きかけを強化する方針です。

先月末、中国の外交を統括する楊潔チ国務委員が訪日し、安倍総理や岸田外務大臣と会談したんです。

日本側は、今年が日中国交正常化45年、来年が日中平和友好条約締結40年という節目の年であることを踏まえ、首脳レベルの対話を強化することを提案しました。

日本政府が思い描くスケジュールはこうです。

まず、来月上旬に行われるG20首脳会談に合わせて、安倍総理習近平主席の会談を実現したうえで、日中間首脳会議を東京で早期に開催し、李克強首相の訪日を実現する。

また来年は、中国が日中間首脳会議の議長国ですので、今度は安倍総理が会議に合わせて訪中し、習近平主席と会談する。

そして、来年後半の習近平主席の来日に期待する、というものです。

日本としては、こうした首脳の相互訪問を通じて、日中関係を段階的に改善していきたい考えなんです。

ある政府関係者は、いたずらに中国と対立して得るものは何もない、安倍総理は中国との関係改善に舵を切った、と話しています。

 

キャスター:中国との関係改善に舵を切ったという言葉が出てきましたけど、そもそも日本に選択の幅はなかったようにも思えるんですけど、この辺はどうでしょう。

 

増田解説委員:北朝鮮への圧力を強化するといっても、中国の協力がなければ、実効性がない現実、そして中国が国際社会で存在感を増している現実を踏まえれば、日本には対中関係改善以外の選択肢はなかった、というのが実際のところでしょう。

もうひとつ日本には、アメリカのトランプ大統領の予測不能な外交姿勢への懸念もあると思います。

当初、中国に厳しい発言をしていたトランプ大統領は、4月の米中首脳会談を機に、態度を変えて、以降中国との協調を重視する姿勢を見せています。

日本の頭越しの米中接近があるかもしれない。

今のうちに中国とのパイプを構築しておかなければ、日本が外されかねないというわけです。

 

キャスター:こういった中国との関係改善に向けた動き、増田さんはどう見ていますか。

 

増田解説委員:私は、北朝鮮に核・ミサイルの開発を断念させるためには、国際社会の結束と多角的な圧力が欠かせないと考えています。

圧力に効果を持たせるためには、中国の協力が欠かせません。

日本が中国との関係改善に努力することは、戦略的な合理性があると思います。

その一方で日中間には尖閣諸島など対立の火種もありますので、手放しで接近を図ることにはリスクもあるでしょう。

中国と付かず離れずの微妙な距離感を保ちながら、北朝鮮問題については、その解決が共通の利益となることを認識させ、実効的な対応を引き出していく、そんなしたたかな外交が日本に求められていると思います。