読むラジオニュース

ラジオニュース書き起こし

決まらぬ半導体売却先 問われる東芝の信用力

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月28日放送

解説 : 今井解説委員

 

キャスター : 東芝株主総会が今日開かれました。

東芝は経営再建の鍵を握るとされる半導体事業の売却先について、今日までに最終的に合意することを目指していましたが、株主総会までに決める事は出来ませんでした。

今井解説委員に聞きます。

売却先、優先的に交渉する相手先は決まっていたんですよね。

 

今井 : 世界4つのグループが入札で、手を挙げていたんですけど、東芝が絶対ゆずれない条件としていた来年3月までに2兆円以上で売却するという点、そして政府が最後までこだわった、東芝モリーが持つ高い技術が外国、特に中国に流出しない、そして売却後も雇用を維持できるという点、こういった点を考えたときにアメリカの投資ファンドと韓国の半導体メーカーの陣営が、 1番条件に合っていると政府が判断したんです。

そしてこの陣営に官民ファンドの産業革新機構日本政策投資銀行の日本連合をくっつけて、そこが過半数を出資する、つまり日本側が経営権を握ると言う枠組みを整えたんです。

そして東芝がこの政府の意向に沿う形で先週、この日米韓の優先的な交渉を先に決めて、株主総会が開かれる今日までに最終的に合意することを目指してきたんです。

 

キャスター : でも株主総会までに決めることができなかった。

これはどうしてなんでしょう。

 

今井 : 東芝側は、調整に時間がかかっているだけだとしているんです。

ただ、それだけではなくて、東芝半導体事業で提携していて四日市の工場を共同で運営している半導体メーカー「ウエスタンデジタル」がこの売却に反対していると、そのことが東芝側から見ると調整の大きな障害になっている。

それは間違いないですね。

エスタンデジタルは、今週自らアメリカの投資ファンドと組んで、買収したいと言う提案を東芝にしているんです。

その一方、他社への売却の差し止めを求める訴えをアメリカなどで起こしているんです。

アメリカの裁判所の判断は早ければ7月中旬にも出る見通しで、その結果によっては東芝側のシナリオが崩れかねない。

このため、優先交渉先のグループの方からはそうするとウエスタンデジタルの対立が解消しない限り、この買収費用を払うのは危険だと言う考えもあって調整が遅れる要因になっているということです。

  

キャスター : この先、この売却交渉はどうなっていくんでしょうか。

 

今井 : 東芝はできるだけ早く合意を目指すとしています。

東芝にとってみると、若干合意が遅れたとしても、最終的に来年3月までに債務超過解消できるのであれば構わないと言うことなんですけれども、刻一刻厳しさが増しているのは間違いありません。

と言うのも、合意が遅れれば遅れるほど2年連続の債務超過上場廃止となる可能性が現実を帯びてくることになるからなんです。

そうなると、経営は一段と厳しくなります。

ただこの先もし合意ができて、3月までに半導体子会社を売却でき債務超過を解消できると言うことになって、それで東芝が再建できるのかと言うとその先の道筋も決して明るいとは言い切れないと思うんですね。

 

キャスター : 今も揉めている半導体事業の売却先が決まって、なんとか債務超過を開始しても、それでもまだまだ大変と言うことですか。

 

今井 : 東芝はこれまでに生き残りをかけて、白物家電ですとか医療機器といった優良な事業は売却してしまっているんです。

海外の原子力事業からも撤退しています。

そして最後に残されたドル箱の半導体事業、これも売却するとなると、この先の成長する姿は描けない。

そういう意見が株主総会でも聞かれました。

東芝は今後、エレベーターや鉄道、水処理のシステムといった社会インフラ事業を中心に再建を目指していくんだとしています。

確かにインフラは国内の官公庁向けの事業も多くて、安定した収益は期待できると言う見方もあるんです。

だけれどもライバルも多いので、海外などへの進出が厳しく、大きな成長は難しい、そういう見方も出ています。

しかも今回、東芝は経営再建のカギを握るとしている半導体事業の売却でも、目標の期日を守れなかったと言うことで、東芝は未だに統治能力がなくて信用できない、そういう見方が広がる心配も出てくるんですね。

そうなると、この先頼みの官公庁のインフラ事業の受注と言うのもマイナス影響が出かねません。

今後、売却交渉を加速させて、東芝のシナリオ通り再建へのスタートを切るのか、それとも時間切れで上場廃止となるのか、まさに今東芝は瀬戸際に立たされていると言っていいと思います。