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東京都議選 小池与党過半数〜国政・都政への影響は〜

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」7月3日放送

ニュース解説

西川龍一解説委員

 

キャスター:東京都議会議員選挙の結果は、政府自民党にとって大変厳しいものとなり、安倍総理大臣は今日になって記者団に「深刻に受け止め、深く反省しなければならない」と述べました。

今回の都議選で、小池知事の支持勢力過半数を得た背景ですね、どういうふうに見てますか。

 

西川:小池さんの戦略的戦術的勝利と言っていいと思います。

小池知事は、去年知事選挙で勝利した後、都議選を見据えた対応をとって来たと言っても過言ではないと思います。

その中で最も意識していたのが、小池人気の維持と公明党との関係です。

知事就任後、議会で公明党との距離を徐々に埋めまして、選挙協力につなげました。

公明党は国政では自民党と連立を組んでいます。

ですから、当初は選挙協力と言っても、どこまで実効性のある協力になるか見方が分かれていたんですけど、決めた以上はきちんとやったという、そういう結果となりました。

特に、7つある1人区では、島嶼部を除く6つの選挙区で公明党の応援を受けた都民ファースト議席を獲得しました。

 

キャスター:一方の自民党、逆風による大敗でしたね。

 

西川:加計学園、豊田議員の暴言、稲田防衛大臣自衛隊をめぐる発言、の3点に加えて、強引とも言える国会運営への批判もありました。

今回の都議選は、本来はこの1年の小池都政をどう評価するかということが大きな争点になるはずでした。

しかし、東京大改革を掲げながら、具体的に何をどう改革していくのか、選挙戦の中ではそこに中身を詰め込むような政策論争は深まらないままでした。

小池知事が、都議選の直前に豊洲移転問題で表明した「築地を守る 豊洲を生かす」という基本方針につきましても、結局、移転賛成反対双方にいい顔を見せただけとの批判に、小池知事がどう答えるのかという問題は、置き去りにされたわけですね。

 

キャスター:今回の結果で、都議会の構成大きく変わりましたよね。

都政への影響はどうですか。

 

西川:都議会第1党だった自民党とは小池知事は対決姿勢を続けて来たわけですよね。

そうなると、都政運営がやりやすくなるということは確かでしょう。

ただひとつ釘を刺しておかなければならないのは、都議会というのは知事の追認期間ではないということです。

地方自治体の長と議会は、共に住民から直接選挙で選ばれる二元代表制です。

都知事と都議会委員は、共に都政を支える車の両輪として、緊張関係を保ちながら民意を探り、決めるべきことを決めていく必要があります。

今回の選挙では、新人54人が当選するなど、議員の半分近くが入れ替わりました。

ある意味素人議員も多くなったことは確かです。

いずれにしても、議会の存在意義は、条例の制定と行政監視機能です。

 

キャスター:小池知事は、議会改革これを訴えて来たわけなんですけど、今後知事と与党の関係がどうなっていくのか、これも注視していく必要がありそうですね。

 

西川:人口も企業も集中して、多くの税収がある首都東京なんですが、都道府県では唯一の地方交付税の不交付団体なんですね。

しかし3年後、オリンピックが終わった後も、こうした豊かな財政状況が続くとは限りません。

急激な高齢化や劣化が進むインフラといった、待ったなしの対応が求められる事態が、目の前に現実問題として突きつけられています。

過去の都議選を振り返りますと、ブームに沸いて初当選を果たした新人議員の多くが、4年後には厳しい戦いを迫られて来た現実があります。

今回当選した127人なんですけど、目先の問題だけにとらわれるのではなく、中長期的な都政の課題にどう対峙すべきなのか、しっかり考え議論してほしいと思います。