増える空き地・空き家に増える悩み
TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ」7月4日放送
トークファイル 酒井綱一郎
森本:増える空き地、空き家に増える悩み、
空き地、空き家が増えてるんですってね。
酒井:前から増えてるって話はあったんですが、最近の発表ですごい数字が出ちゃったなという感じなんですけど、有識者で作っている所有者不明土地問題研究会というのがあるんですよ。
所有者の分からない土地の総面積がどれぐらいあるかと累計したんですけど、九州の面積より広い。
410万ヘクタール。
宅地が14%、農地が18%、林地が25%なんですけど、気になる数字は50年以上にわたって所有者がわからない土地の割合が22%もある。
土地というのは、所有者が亡くなると、相続人が自分の土地であると登記するじゃないですか、ところが登記しない。
それから、住所が変わって名義人の連絡先がわからなくなってしまう。
こういうことがあるんですね。
登記しないというのは、いけないことなのかというと、不動産登記しないのは法律違反じゃないんですよ。
そうすると、この土地はもう売れないとかあるじゃないですか、でも登記すると登録免許税とか固定資産税とか土地の管理コストとかかかってくるじゃないですか。
だからもう放っておけと。
こういう人が結構多いということですよね。
するとどんな問題が起きるか。
一番困っているのは行政なんですよ。
行政が道路を通そうとすると、そこに所有者不明の土地があると、相続人を探さないといけないんですよ、了解を取るために。
登記されていないということは、登記簿上の所有者は亡くなった方じゃないですか。
何十年も前の人だとすると、一応権利上、子供、孫、ひ孫、相続人がねずみ算式に増えて、100人200人と交渉しなければいけない。
理論上はそういう話になってしまう訳ですね。
少しかかっただけの土地なのに、それだけで行政はギブアップという。
他には、森とか林の場合は、荒れ放題になるという問題があります。
それからゴミの不法投棄があります。
害虫の発生があります。
だから決して、そのままにしていいという訳じゃないんですよ。
これが空き地の問題。
今度は空き家の問題なんですが、空き家ってどれくらいあるかと言いますと、総務省の住宅土地統計調査によりますと、820万戸くらいあります。
これがどうなって行くのかというのを、野村総合研究所が以前予測してるんですよ。
空き家は2023年に1400万戸、2033年にさらに増えて3戸に1戸が空き家になる。
これは地方の話でしょうということではなくて、東京都も82万戸空き家があるんです。
ただこちらの場合は、節税目的で賃貸住宅を作ったけど借りる人がいないという、そういうのが60万戸ぐらいありますので、これはあくまでも経済上の問題なんですが、そうは言いながらも、持ち主が長期に渡っていない空き家というのも15万戸ぐらいあるんですよ。
これはさっきと同じように、所有者がいないということになると、これもまた行政が困る。
ゴミ屋敷になったりとかという問題も出てきます。
これも大問題だと思いますね。
森本:結局対策はどうするんですか。
酒井:まずは、空き地対策なんですけど、結局個人の所有権が強すぎるもんだから、こうなってしまう、というので所有者不明の空き地は簡単に国や自治体が使えるように法改正していこうという動きが出ています。
参考になっているのがアメリカにあるランドバンク制度というのがあって、所有権を放棄した土地とか税を滞納した土地を地方政府が簡単に公的目的であれば使えるという仕組みがあるんです。
まずそういうことをやっていきましょうというのがひとつです。
一方、空き家対策としては、企業が考えているのが民泊というですね、先月楽天と不動産サービス業のライフルというところが組んで、空き家を活用した民泊事業に乗り出すと発表してるんですね。
ライフルというのは、800万件を掲載する不動産住宅情報サイトを持っていたりとか、2万2千店を超える不動産の加盟店がありますから、その強みを生かして、その不動産情報の1割ぐらいを空き家を宿泊所として活用できないかということを検討しているところです。
大阪では実際にそういう話が始まっていて、中古住宅のリフォーム会社6社が、世界ホテルというのを始めました。
普通ホテルというと、一つのビルの中にフロントがあったり、宿泊所があったり、レストランがあったりしますけど、そうじゃなくて、泊まるところは点在してる空き家なんです。
1カ所にだけフロントみたいな機能を果たすところがあって、6社が共同で買い取った空き家を泊まれるようにすると。
森本:こういう活用ができる場所はいいけれどね。
活用の目処が立たないところが放置されているとなかなか解決は難しいですね。