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スポーツドリンク子供には注意

TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ」7月5日放送

トークファイル   渋谷和弘

 

渋谷:夏になると汗をかいた時に糖分や塩分を含んだスポーツドリンクなどイオン飲料を飲む人も少なくないと思いますけど、このスポーツドリンクを特に子供に与える時は注意が必要だという話です。

スポーツドリンクの飲み過ぎで健康状態を悪化させてしまう子供がこのところ増えてるんです。

その代表的な病気が脚気なんです。

脚気はビタミンB1が不足して発症する疾患ですよね。

全身のダルさとか食欲不振、手足のむくみ・痺れ、あるいは歩きにくいなどの神経症状が出る場合もあって、重症化すると心不全を引き起こして死に至るケースもあるそうです。

脚気というと昭和初期とか終戦直後といった食糧事情が悪かった時代の病気という印象があるんですが、実は近年脚気になる子供が離乳期を中心に増えてるんです。

その原因が、スポーツドリンクなどイオン飲料の飲み過ぎにあるということがわかったんです。

なぜかと言うと、その原因というのは、スポーツドリンクに含まれる糖分にあるんです。

スポーツドリンクって意外と糖分が多くて、各社の製品によってばらつきがありますが、平均すると100ミリリットルに5グラム入ってます。

ですので、500ミリリットルで25グラムの糖分を含んでいるんです。

この糖分を体内で分解して、エネルギーを作り出すためには、ビタミンB1が必要なんです。

つまり、スポーツドリンクを飲んで糖分を分解するためのエネルギーが作られれば作られるほど体内のビタミンB1が失われていくということなんです。

ざっくり言うと、スポーツドリンクを1リットル飲むごとに、体内のビタミンB1がおよそ0.1ミリグラム失われる計算になります。

厚生労働省の摂取基準ですと、ビタミンB1というのは1歳から5歳で1日に0.5から0.7グラム、6歳から9歳で0.8から1グラムの摂取が推奨されてるんです。

スポーツドリンクを飲み過ぎると、これを下回ってしまって、ビタミンB1欠乏症になって、脚気のリスクを高めてしまうというですね、こういう因果関係があるんです。

ちなみに、スポーツドリンクと同じように糖質を多く含むインスタントラーメンなどの即席麺類なんですけど、こちらは1993年以降厚生労働省の指針に基づいて、ビタミンB1の添加を始めてるんです。

ビタミンB1が入ってるんです。

ところが、スポーツドリンクの大半は、いまだにビタミンB1が添加されていないんです。

ですので、不足していくリスクが高くなるということです。

加えて問題なのが、スポーツドリンクが子供にとっては、つい飲み過ぎてしまいたくなる飲料であるということなんです。

スポーツドリンクって身近にあってどこでも売ってます。

体にいいという印象もあったりします。

ですので子供に日常的に与える親御さんも少なくないんです。

実は脱水状態ではない、普通の状態で子供がスポーツドリンクを飲むと、含まれている塩分とか糖分で、かえって喉が乾いてしまって、それで飲み続けてしまうということなんです。

加えて、子供は甘い味に慣れてしまうと、薄味の食事とか飲料を欲しがらなくなって、スポーツドリンクが癖になってしまうというリスクがあるんです。

実際に、島根大学講師で小児科医の長谷川医師が全国5000件以上の子供の尿を調査したところ、10人が脚気にかかっていると診断されました。

どうしてかかっているか、主治医に聞き取り調査をしたところ、離乳期の9人が十分な食事を摂らず、代わりに1日1リットル以上のスポーツドリンクを飲んでいたと。

離乳期にスポーツドリンクが癖になってしまって、薄味の離乳食を欲しがらなくなってしまった、それで食欲不振を心配して親が子供にスポーツドリンクを与えてしまうというケースもあるそうなんです。

ですので長谷川医師は、安易に子供にスポーツドリンクを与えるのは危険だと警鐘を鳴らしています。

メーカーも注意を促していまして、例えばアサヒグループ食品の担当者は、スポーツドリンクというのは汗をかいた時の水分補給に飲んで欲しい、授乳や食事の妨げにはならないように使って欲しいと言っています。

 

森本:スポーツドリンクは大人が飲むものと思っていましたが、子供に与える人がそんなにいるんですか。

 

渋谷:増えてるんです。

甘くて飲みやすい、健康にいいというイメージが、かえって与え過ぎてしまうということにつながっているようです。

もちろんスポーツドリンクって、下痢とか発熱で脱水症状になった時は、水分補給を助けますので、医師がすすめることもある訳で、非常に有用な飲み物なんです。

ただ、癖になってしまうと、飲み過ぎて体調を崩してしまう。

これは、本末転倒だということです。

 

森本:これから季節的にも、飲む機会が増えますからね。

 

渋谷:水よりもいいと思っちゃうんですが、落とし穴があるということですね。

加えて、最近の研究では、ビタミンB1が不足すると、大人でも免疫機能が低下してしまって、感染症にかかりやすくなるリスクがあることがわかってきたんです。

ですので、大人もあんまり水代わりに飲むことについては注意が必要だったりします。

 

森本:暑いと水分が欲しくなるでしょ。

水ばかり飲んでる訳にいかないから、こういうものに手が出てしまいますよね。

 

渋谷:そうなんですね。

エネルギーを補ってくれるんじゃないかとか思い込んでしまうんですけど、通常は水とか麦茶がいいそうです。

脱水症状でマズイかなという時にはいいんですけど、そこは切り分けて、自分の体の状態と会話しながら上手に飲むということですね。