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核兵器禁止条約交渉 最新情勢

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」7月6日放送

ワールドリポート

 

キャスター:国連で行われている核兵器禁止条約の交渉会議についてお伝えします。

この会議は、今年3月に交渉が始まり、核兵器を持たない100を超える国が参加してきました。

現在2回目の会議が開かれていて、議論は大詰めを迎えています。

この交渉の行方について国際部の小山記者に伝えてもらいます。

条約の草案は決まっているそうですね。

 

小山:はい、最新の草案では条約で禁止する事項として、核兵器の開発や保有・使用とともに核兵器保有を背景に使用すると威嚇することも盛り込まれているんです。

つまり、核抑止力の考え方を明確に否定しているんです。

議長は、会議最終日の7日には、条約案を採択し、今年秋の国連総会での採決を経て、条約は制定される見通しです。

 

キャスター:核軍縮に関わる条約というのはNPT核拡散防止条約がありますよね。

なぜ今、新たな条約の制定なんでしょうか。

 

小山:NPTが軸の核軍縮に、核兵器を持たない多くの国が、もはや限界だと感じているからです。

NPTは、アメリカやロシアなど、5カ国を核保有国と認め、核軍縮を求める一方で、そのほかの国には保有や拡散を禁止し、核兵器の廃絶を目指してきました。

しかし発効から40年以上経っても、世界にはおよそ1万5千発の核兵器が存在し、核軍縮は進んでいないばかりか、パキスタンやインド、北朝鮮など核兵器を持つ国は逆に増え、核をめぐる状況は、以前よりも深刻になっています。

現状に苛立ちを募らせた核兵器を持たない国々が、4年前から核兵器を法的に禁止する条約を作るべきだと主張し、交渉の開始にこぎつけたんです。

 

キャスター:この交渉の会議には、核保有国そして日本は不参加ですよね。

 

小山:核軍縮の軸はNPTのみだとする核保有国やアメリカの核の傘の下にある日本は、会議に参加していません。

とりわけ、日本政府は大きなジレンマを抱えています。

日本はこれまで、唯一の戦争被爆国として、国際社会の中でも、核廃絶を目指す象徴的な存在と見られてきました。

核兵器禁止条約についても、国内では被爆者が中心となって、300万人近い署名を集め、会議には被爆者も訪れて、交渉の行方を見守っています。

一方で日本政府は、アメリカの核抑止力に頼る安全保障政策を取っていて、頼りのアメリカのトランプ大統領は、核戦力の強化に意欲を示しています。

北朝鮮による弾道ミサイルの発射など、脅威が高まる中で、禁止条約に同調することで、これまでの安全保障政策が破綻してしまうことは避けたいというのが、政府の本音だと思います。

 

キャスター:核保有国そして核兵器を持たない国との間にある大きな隔たりが埋まらないまま、条約は間も無く制定の見通しなんですね。

今後、世界の核軍縮はどうなるでしょう。

 

小山:核保有国が批准しない条約が、どこまで実行力をもつのかは不透明です。

保有国や日本のような核の傘の下にある国々は、今後もNPTを軸に核軍縮の議論を進めていくことになります。

核兵器を持たない国側も、核軍縮の議論で双方が、同じテーブルにつける唯一の機会の、NPT再検討会議には、参加を続ける見通しですので、NPTが実質的な核軍縮の中心であり続けることに、変わりはないと思います。

その一方で、100を超える核兵器を持たない国側は、禁止条約の制定によって、核保有国がたとえすぐに核兵器を手放さなかったとしても、核兵器を持ちにくい・使いにくい状況を、作っていきたい考えです。

日本は今回、条約交渉に参加しないという選択をしましたが、もはや多くの国が参加する見通しとなった、核兵器禁止条約にどう向き合い、唯一の戦争被爆国として今後の世界の核軍縮にどう貢献していくのか、問われることになると思います。