読むラジオニュース

ラジオニュース書き起こし

炭水化物ダイエットのウソ・ホント 専門家に聞く(食と健康のウソ・ホント)

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」7月4日放送

解説:女子栄養大学教授 武見ゆかり

 

武見:最近低炭水化物ダイエット・低糖質ダイエットあるいはローカーボ食というものがかなり流行っているので、そのウソ・ホントを取り上げたいと思います。

炭水化物は、大きく分けると、人の消化酵素で消化できるでんぷんや砂糖などの糖質と消化酵素では消化できない難消化性成分の食物繊維、これらを合わせた総称です。

この二つは分けて考えたいと思います。

 

では、1問目です。

低糖質ダイエットは、減量の効果がある。

ウソ考えたいとホントか。

 

キャスター:ホント。

8年ほど前にやったんです。

ご飯などをやめたんです。

そして、タンパク質を採るようにした、野菜も採るようにしたんです。

すると、6ヶ月過ぎてから体重が減り出して、12キロ落ちました。

 

武見:どれくらい続けられました。

 

キャスター:5年間ぐらい続けました。

それから、少しずつ増えはじめまして、半分ぐらいリバウンドしました。

 

武見:先程の質問の回答は、一応ホントです。

ただし、短期的には効果があると言う注釈付きなんです。

糖質というのは、今おっしゃったようにご飯を食べられなくしたということですけど、主にご飯やパンなどになります。

そうした糖質を制限した食事は、だいたい6ヶ月から1年間の短期では確実に体重減少とかの効果が見られます。

ただ、長期的な継続性や安全性は確認されていないんです。

海外の研究が中心ですけど、10年以上の長期の経過観察結果では、糖質制限食の方が死亡率を増加させるといった報告があります。

さっき、確実に痩せましたとおっしゃったんですけど、低糖質にすると痩せる理由としては、結果としてエネルギーそのものが少なくなるということによって、つまり単純にカロリーを減らせば痩せますので、そういう理由なのか、エネルギーは同じだったけど糖質が減ったから、痩せたのか、実はこの区別は難しいんです。

そういう意味でいうと、ご飯やパンなどを減らしてしまう、極端に言えばほとんど食べない、という方法は、非常にシンプルでわかりやすいし、一方でどうぞおかずは好きに食べてくださいというふうになると、なんとなくやれる感じですよね。

そういう意味で、短期的には減量効果が多く見られています。

ただ、日本肥満学会日本糖尿病学会も、極端な糖質制限食は勧めていません。

理由はさっき述べたように、ひとつは長期的な継続性が乏しいこと。

いわゆるリバウンドがあるということですね。

それからふたつにはご飯を控えると、さっきタンパク質を増やしたとおっしゃっいましたけど、やはり肉や魚などの主菜を増やすことになります。

そうすると、タンパク質も増えますし、同時に飽和脂肪酸などを含む動物性の脂肪も増えてきます。

このタンパク質の摂取が多い集団の方が、長期的には心血管疾患の発症率が高いとか、成人ではガンの死亡率が高いという報告もあって、長期的には安全性は確認されていないというのが今の研究をまとめた結果です。

 

キャスター:なぜ私がそれをしたかというと、メタボリック症候群と言われて、体重を落とした方が成人病にならないと言われたんです。

だから落としたんですよ。

でも今の話を聞くと逆に危なくなることもあるということですね。

 

武見:それは、体重を落とすことが悪いのではなくて、落とし方の問題だと思います。

極端な糖質制限食は、あまり勧められない。

ということで、先ほど言った学会などでは、総エネルギーの50〜60%を糖質で、というのが今のお勧めということです。

と言っても、どれぐらいの量かわかりませんよね。

だいたい日本人は、50〜60%のうちのさらに60%ぐらいを穀類で採ってるんです。

この数字を当てはめて考えると、仮に1日2000キロカロリーとすると、1食がご飯で言えば120〜150グラム、120グラムだとコンビニとかのおにぎり1個分よりちょっと多いぐらい、150だと普通のお茶わんに1膳ぐらいですね。

これを1日に3回採るとだいたい2000キロカロリーだと糖質が50〜60%ぐらいになります。

ですから、今までご飯を2膳も3膳も食べていたような方が、1膳にするとか、というような意味での緩やかな糖質制限ダイエットは問題がない訳です。

 

キャスター:カツ丼とか牛丼とか丼物をよく食べていた人が、これを半分にしてサラダをつけるとか、バランスですね。

 

武見:結論はそこに来るんです。

緩やかなやり方なら、栄養素のバランスをうまく取って、続けられると思います。

1食1膳なら、そんなに我慢しなくてもいいと思います。

全然食べないとか極端なことはお勧めできないということです。

 

キャスター:それではどんなものを食べたらいいんでしょうか。

 

武見:穀類は今言ったようにある一定量は採った方がいいです。

では次の質問です。

同じ穀類でも、精製度の低い穀類を食べた方が健康はプラスの効果がある。

つまり、精白米ではなくて玄米とかですね。

 

キャスター:ほんとだと思います。

 

武見:正解です。

精製度の低い穀類、五分付きや胚芽精米・雑穀入りのご飯、にすることによって、食物繊維が多くなります。

最初にお話しした通り、炭水化物は糖質と食物繊維がある訳ですけど、食物繊維は糖尿病・心筋梗塞それから脳卒中などいろんな生活習慣病の発症予防に効果があることがわかっています。

でも日本人は不足なんです。

目標としては、だいたい18〜20グラムぐらいを採っていただきたいんですが、現在平均が14グラムぐらいです。

まだまだ足りないんです。

そうなると、食物繊維を採りましょうというと、一般の方は野菜・果物を食べましょうとなるんですけど、穀類を食べるのにその内容を変えるだけで簡単に食物繊維が採れるんです。

そういう意味でハードルが低いんです。

さらに、同じ食物繊維でも、穀物由来の食物繊維が多いことは、糖尿病の発症リスクを下げるという結果がありますが、野菜や果物の食物繊維ではそういう結果は見られないんです。

ということがあるので、同じ食物繊維でも穀類から採りましょう。

そのために、精製度の低い穀類を意識して採っていきましょうというのが、穀類の採り方としては、健康にプラスということになります。

もちろん、野菜を食べるのはいいことなんですけど、穀物の栄養も必要ということです。

穀類は決してエネルギーだけのものではありません。

食物繊維もあります。

胚芽米などにすればビタミンも採れます。

ですから、決してカロリーだけじゃない他の栄養素もありますから、それを全く採らないとか極端なことは決してお勧めできないということです。