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G20トランプ保護主義の行方 ニュースアップ

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」7月10日放送

 

キャスター:先週末に開かれましたG20主要20カ国の首脳会議では、アメリカのトランプ大統領とそのほかの首脳たちの間で貿易をめぐる考え方の違いが鮮明になりました。

神子田解説委員に聞きます。

この貿易をめぐる対立はどんな点に現れましたか。

 

神子田:G20などの国際会議と言いますと、去年までは世界経済を発展させるためには、自由貿易が重要だということで、あらゆる保護主義に抵抗する、といった文言が会議後の声明に盛り込まれていたんです。

ところが、アメリカがトランプ政権に変わった後に開かれたG20財務相中央銀行総裁会議では、アメリカの反対でこの文言が盛り込まれませんでした。

背景には、トランプ大統領が自国の労働者を守るため、海外からの輸入を制限しようという、保護主義的な姿勢を打ち出していたことがあります。

そこで今回、トランプ大統領が初めて参加する首脳会議で、この文言の取り扱いがどうなるかが、注目されていました。

その結果、会議後に発表された首脳宣言では、不公正な貿易慣行を含む保護主義と戦い続けるという文言が盛り込まれたものの、同時に正当な貿易上の防御手段の役割を認めるという文言も盛り込まれました。

不公正な貿易に対しては対抗措置も辞さないとするアメリカの主張に配慮したものと見られます。

 

キャスター:そのほかに今回の会議で注目されたのはどんな点でしょうか。

 

神子田:自由貿易を守るための国際機関、WTO世界貿易機関について、どういった議論が行われるかが注目されました。

トランプ政権は今、国家安全保障上の理由で、鉄鋼製品の輸入を制限する通称拡大法232条の適用を検討しています。

この背景には、WTOに対する不信感があるんです。

具体的に言いますと、トランプ大統領は、中国製の鉄鋼製品が事実上政府の補助金を受けて不当に安い価格でアメリカに輸出されていることに不満を強めています。

そしてそうなってしまうのは、本来そうしたルール違反を厳しく取り締まるはずのWTOが、きちんと役割を果たしていないからだと考えています。

つまり、WTOに頼れないなら自分たちでやってしまおうという考え方なんです。

 

キャスター:そういう中で、今回の会議ではどういう議論になったんでしょうか。

 

神子田:会議の中では、アメリカの強硬な保護主義措置に対する各国の不満や懸念が表面化しました。

そして、首脳宣言には、WTOの機能の改善に向け、貿易ルールの効果的かつ迅速な執行を確実なものとするよう、各国が協力していくという文言が盛り込まれました。

WTOを改善することで、アメリカをなんとか現在の国際貿易秩序の中に引き止めようという国際社会の意思がうかがえます。

というのも、アメリカが、自国の産業を守るために、保護主義的な措置を発動した後、WTOがそれを国際ルール違反だと認定しても、必ずしもその決定に従わない構えを示しているからです。

各国としては、アメリカにはあくまでWTOのルールの範囲内で行動してもらいたい、公然とルール違反をするようであれば、他の国も対抗して、保護主義に走りかねないと懸念しているんです。

今後、アメリカが納得のいくようなかたちでWTOの機能が改善されていくのか、注目していきたいと思います。