中国に返還されて20年、香港の今後 ワールドリポート
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キャスター:香港は今月1日にイギリスから中国に返還されて20年を迎えました。
香港支局の吉岡記者に聞きます。
香港はこの20年でずいぶん変化しましたね。
吉岡:香港は20年前の7月1世紀半に渡るイギリスの植民地支配を終えて中国に返還され、50年間は資本主義や言論の自由など高度な自治を認める1国2制度が導入されました。
その20年の大きな変化は、経済面での香港の地位の低下です。
香港と中国本土のGDP(国内総生産)を比べますと、返還当時香港は中国の18%あったのに対して、その後の中国本土の急速な経済成長で、今は3%を切っています。
香港はかつて、「金の卵を産む鶏」とも言われましたが、今では金融や不動産・観光など基幹産業で中国依存を深めています。
こうした中で、中国政府は香港に、中国への愛国心を高める教育の導入を迫るなど、政治面でも影響力を強めるようになりました。
キャスター:このところ、香港では若者を中心に中国政府への反発が強まっていますね。
吉岡:転機となったのは、3年前、学生などによる大規模な抗議活動、いわゆる雨傘運動です。
香港トップを決める行政長官選挙に直接選挙を導入する上で、中国が共産党に批判的な候補を事実上排除する方針を決め、学生らが猛反発しました。
しかし、運動は当局に強制排除、その後一部の若者は香港の独立といった急進的な主張を掲げ、うち2人が去年の議会選挙で当選すると、中国は香港の憲法に法解釈を加えて、2人の議員を失職に追い込みました。
その後も、雨傘運動の中心人物らが次々に当局に逮捕・起訴されています。
キャスター:今回の返還20周年の記念式典では、習近平国家主席が演説して、発言が注目されました。
吉岡:習近平主席は、式典の演説で、1国2制度は成功しているとしながらも、1国の部分が大切であると強調しました。
習近平主席は、国の主権を脅かすいかなることも、中央の権力などに対する挑戦も絶対に許さないと述べ、一部で出ている独立の主張を強く牽制しました。
この発言は、香港政府に対して、中国への敵対的な活動を取り締まる国家安全条例の早期制定や愛国教育の必修化などを迫るものと受け止められました。
キャスター:習近平主席が、ここまで強い調子で演説する背景には、何がありますか。
吉岡:習近平主席は、香港の特別な地位が低下する中で、中国から見ていわば自由すぎる状態で香港を放置すれば、共産党への批判や独立の主張が広がり、一党支配に影響が及ぶリスクが大きいと考えるようになったと見られます。
特に、中国は今年後半、共産党の指導部メンバーの大幅な交代が予想される党大会を控え、本土では民主活動家などへの引き締めを強めていて、香港だけを特別扱いできないという事情もありそうです。
こうした、中国の姿勢に若者や民主派からは、反発が起きています。
1国2制度が50年の期限を迎えるのは2047年。
香港により共産党の支配が行き届くようにしたいという中国政府側と、今ある自由をなんとしてでも守りたいと市民とのせめぎ合いは、これからも続きそうです。