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就任から半年、トランプ大統領の中東政策  ワールドリポート

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」7月11日放送

ワールドリポート

 

キャスター:アメリカのトランプ大統領が就任してから間も無く半年が経ちます。

そのトランプ大統領の中東政策について、ワシントン支局の西川記者に聞きます。

アメリカでは中東政策が国民にとっても重大な関心時のようですね。

 

西川:日本ではアメリカの外交政策と言いますと、ロシアや中国・北朝鮮などがよく伝えられていますが、こちらでニュースを見ていますと、そうした国々と同じくらいあるいはそれ以上に中東のニュースに時間が割かれています。

今年5月に、トランプ大統領は初めての外交に行きましたけど、その最初の国として選んだのはサウジアラビアでした。

アメリカが中東を重要視している現れと言えます。

なぜそこまで中東に関心が高いと言いますと、古くから中東の産油国から石油を輸入して来ましたし、さらにこの中東が不安定化すれば、国際情勢全体にも大きな影響を与えるからです。

 

キャスター:そのトランプ大統領の中東政策ですけど、この半年を振り返ってどんな政策だったと言えますか。

 

西川:キーワードとして言えるのは、テロ対策です。

この半年、トランプ大統領は前のオバマ政権とは異なる様々な中東政策を打ち出して来ました。

移民国家というこれまでのアメリカのイメージからも驚きを持って受け止められたのが、中東とアフリカの一部の国からの入国を制限する大統領令でした。

他にも、オバマ政権で関係が冷え込んでいたサウジアラビアと関係を強化しました。

自分たちが直接的に中東に多くの兵士を送りこんで、中東の治安維持を担うのではなくて、地域の盟主であるサウジアラビアなどにそれを任せて、中東を安定化させ、過激派の台頭を抑え込みたいという狙いがあるのだと思います。

その根底にあるトランプ大統領の思惑、それはアメリカ国内へのテロリストの流入を許さず、テロを未然に防ぐということだと思います。

 

キャスター:トランプ大統領の狙い通りにいくのかどうか、今後の見通しはどうですか。

 

西川:テロを防ぐというのは簡単なことではありません。

過激派組織ISのイラク最大の拠点モスルについて、9日ついにイラク軍がISから解放したと表明しました。

そしてこれは、ISにとっては大きな打撃です。

ISの首都とも言われるシリアのラッカに対するテロ包囲作戦も進み、ISは彼らが3年に渡って主張してきた国家としての体をなさなくなりそうです。

ただ、仮にイラクやシリアでISを弱体化させることができたとしても、世界からISやテロの脅威がなくなるわけではありません。

ISは報復として、世界各地でのテロを呼びかけると見られますし、イギリスなどヨーロッパでも最近もテロが相次いでいます。

最近のテロの特徴としては、必ずしも外国から流入したテロリストによるものではないという点があります。

その国で生まれ育った人が、インターネットなどで過激思想に感化されて過激化する、いわゆるホームグロウン型のテロや、組織からの直接の支持なしに一匹オオカミ的にテロを起こすローンウルフ型というテロが増えていまして、当局の監視にも限界があります。

私は一昨年までの3年間、中東に駐在していました。

過激派というのは、そこに住む若者たちの政権への不満や貧困であったりといったところにつけこんで、メンバーを勧誘していました。

アメリカにとっても、これは人ごとではありませんし、海外からの入国を制限しても、アメリカ国内で育つテロの目を摘むことは容易ではありません。

アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領にとって、テロ対策は今後もプライオリティが高いことは間違いありません。

そのテロ対策と大きく関わる中東政策の行方を今後も注目して見て行きたいと思います。