読むラジオニュース

ラジオニュース書き起こし

改正刑法の今後の課題 ニュースアップ

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」7月13日放送

ニュースアップ

 

キャスター:性犯罪の厳罰化を盛り込んだ改正刑法が施行されました。

刑法の性犯罪に関する分野は明治40年の制定以来初めて大幅に見直されました。

その内容と今後の課題について、清永解説委員に聞きます。

明治以来の見直しということなんですが、どうして今行われたんでしょうか。

 

清永:被害者や支援団体はずっと以前から改正を求めていました。

ただ、長い間議論が進まなかったんです。

一方で女性の人権が軽視されているという声が強まって、去年ようやく国の法制審議会が見直しを答申し、改正が実現しました。

ところが、国会ではテロ等準備罪のあおりを受けて、十分な審議が行われたとは言えないまま成立した経緯があるんです。

 

キャスター:改正のポイントについて整理してもらえますか。

 

清永:いくつかありますが、まずこれまでの強姦罪という名称を強制性交等罪に変更するとともに、被害者を女性に限っている規定を見直し、性別に関わらず被害者になり得るとしています。

そして一番大きいのは、被害者が告訴を行わなくても罪に問うことができるようになった点です。

告訴する場合は、事件について警察で詳しく話をしてさらに相手の処罰を求める手続きを取らなければなりませんでした。

このため、ためらって泣き寝入りする被害者が多くいます。

今回の改正は、被害者の負担を少しでも減らし、泣き寝入りをなくそうというのが狙いです。

もうひとつあります。

加害者の刑は逆に重くしました。

これまでは法律上の刑の下限が懲役3年でした。

しかしこれが5年に引き上げられます。

厳罰化です。

執行猶予というのは懲役3年よりも軽い判決の場合しかつけられないと定められています。

したがって、法律上刑を軽くする特別な事情がない限り、執行猶予にはならないとみられます。

 

キャスター:これからの課題はどんなところにありますか。

 

清永:ひとつは、暴行や脅迫という法律上の要件が残されたことです。

現実には、恐怖で体が凍りついて抵抗できないとか、加害者側が職場の上司で立場を悪用した犯行というものも後を絶ちません。

こういう場合は、暴行や脅迫を直接伴わないこともあって、支援団体は要件の撤廃を求めていました。

この点は、今のまま残ったんですが、これでいいのか、あるいは緩和すべきか、今後も検討すべき課題だと思います。

 

キャスター:被害者の支援も充実させる必要がありますね。

 

清永:被害者を支える組織としてワンストップ支援センターが各地で作られています。

これは相談への対応だけでなく、病院での治療、関係機関への付き添いといったサポートを1箇所で受けることができる専用の窓口です。

国はこの施設を残酷の都道府県に設置するという目標を立てて、これまで39箇所に設置されていますが、まだ全くない県もあるんです。

最初に述べましたけど、この法律は、テロ等準備罪のいわば影に隠れて十分な審議が行われないまま成立したと言えると思います。

しかし、これは大事な法律です。

たくさんの人に知ってもらいたいと思いますし、法律の附則には、3年後さらに必要な措置を検討するよう盛り込まれています。

これからも必要な対策を議論して、取り組みを充実してもらいたいと思います。