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どうなる?カタール断交問題 ワールドリポート

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」7月13日放送

ワールドリポート

キャスター:サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)などとカタールの間で国交が断絶してから1ヶ月以上が経過しました。

この対立の行方と影響についてドバイ支局の吉永記者に聞きます。

同じ湾岸諸国での国交断絶ですけど、現状はどうなっていますか。

 

吉永:サウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)などは、カタールに対して先月5日に国交を断絶した上で、人の往来や物流を制限する措置を講じています。

このため、ドバイからカタールまでは直行便で1時間程だったんですが、今は直行便がないため周辺国を経由して5時間ほどかかるようになりました。

ドバイから日帰り出張がかなり難しくなっているのが現状です。

また物流もカタールに対して隣国のサウジアラビアが陸の国境を閉鎖していまして、このため断交している国を経由しないルートに変更を余儀なくされています。

一方で、日本がカタールから輸入しているLNG(液化天然ガス)の供給ですが、こちらはカタールから船で直接輸出しているため、供給不安になるような影響は今のところ出ていません。

 

キャスター:対立の背景には何がありますか。

 

吉永:今回各国は、カタールがテロ組織を支援しているなどと主張して、断交に踏み切りました。

UAE(アラブ首長国連邦)の地元メディアは、連日カタールを批判する報道を展開しています。

UAEの首脳にも近い有力紙の編集長にインタビューしましたが、今回の対立はいまに始まったわけではなく、歴史的な根深いものがあったとしていました。

液化天然ガスの輸出などで豊富な資金のあるカタールは、各国とは異なる独自の外交を展開してきました。

特にエジプトなどで起きた中東の民主化運動「アラブの春」の後に誕生した、モルシ政権を積極的にカタールは支援したんです。

その後モルシ政権の支持基盤になったのがイスラム組織「ムスリム同胞団」ですが、サウジアラビアなど各国は、同胞団を危険視しテロ組織に指定しています。

一方カタールは、今のところそうした対応はとっていません。

こうした対応の違いが各国を刺激し、今回の対立の火種となってきたんです。

 

キャスター:この対立の解消のために、国際社会はどう動いているんでしょうか。

 

吉永:今回の対立をめぐっては、同じ湾岸のクウェート、そしてアメリカが中心になって仲介に動いています。

クウェートは、双方の対立が一度表面化した3年前に、対立解消に導いた実績があります。

今週に入って、アメリカのティラーソン国務長官クウェートカタールサウジアラビアを訪問して、仲介に向けて動いています。

ただ、双方とも依然として歩み寄る姿勢を見せておらず、解決には時間がかかるとの見方が広がっています。

 

キャスター:もしこうした仲介がうまくいかずに、対立が長期化した場合どのような影響が今後考えられますか。

 

吉永:中東では先日過激派組織ISの最大の拠点であったイラクのモスルが奪還されました。

ここ数年、中東では各国がISとの戦いに力を注いできたんです。

その中で、サウジアラビアなどとカタールの対立は、いわば眠れる活断層となっていました。

今回の対立が長期化すれば、各国の利害が絡み合うシリアやイエメン、リビアなどで間接的に新たな混乱を巻き起こす恐れもあると言われ、今後の行方を注視する必要があります。