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フェイクニュースに対応するファクトチェックの取り組み ワールドリポート

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」7月13日放送

ワールドリポート

 

キャスター:インターネット上で嘘のニュース、フェイクニュースの拡散が問題になる中、世界各地の報道機関やNPOなどが、ファクトチェックと呼ばれる活動を行なっています。

国際部の横河記者に聞きます。

ファクトチェック、直訳しますと真実かどうかチェックするということになりますね。

 

横河:このファクトチェックというのは、政治家の発言やニュースに含まれる情報などが、事実に基づくものかどうか、その真偽を検証する活動のことを指します。

検証の際には、発言や情報の出典元を遡って調べたり、専門家に取材をしたりして、事実かどうか確かめます。

近年、欧米を中心に、特に政治家の発言内容を検証する活動が活発となり、去年のアメリカ大統領選挙でも、大きな注目を集めました。

大手メディアだけでなく、たくさんのNPOが、トランプ候補とクリントン候補のテレビ討論会や演説での発言内容に嘘や誇張が含まれていないかチェックしました。

また、最近はインターネット上で拡散する事実に基づかないニュース、いわゆるフェイクニュースを検証する取り組みも始まっています。

今年のフランス大統領選挙では、フランスの大手メディアが連携して、クロスチェックというプロジェクトを立ち上げ、移民に対する反感を強めるようなフェイクニュースを中心に検証しました。

 

キャスター:ファクトチェックというのはますます重要性が増してますよね。

 

横河:ひとつには、SNSなどのソーシャルメディアの発達で、私たちが日頃接する情報の量が飛躍的に増え、その中で真偽が定かでない情報が蔓延しやすくなっている点が挙げられます。

たとえばアメリカでは、トランプ大統領が虚偽の内容を含む発言を繰り返し、さらにそれがソーシャルメディアで拡散するという悪循環が起きています。

ソーシャルメディアから情報を得る人が増え、目にしている情報が真実なのか嘘なのか、判断が困難になっていると言えます。

私は今月5日から7日にかけて、スペインで開かれたファクトチェックの国際会議に出席してきました。

50カ国を超える国々からおよそ180人のジャーナリストやNPOの職員が集まり、最新の手法や技術を話し合いました。

会議は、事実が軽んじられるようになってきた現代社会でこそ、ファクトチェックが重要だという出席者たちの熱気に満ちていました。

 

キャスター:会議に出席して、何が一番印象に残りました。

 

横河:参加者に共通していたのは、ファクトチェックした結果を、どうやって関心を持たない人に届けるか、という課題意識でした。

ソーシャルメディアでは、自分が関心を持つ分野や同じ考え方をする人の情報は入手しやすいのですが、それ以外の情報というのは、届きにくくなります。

この殻を打ち破り、事実を届けるのは、とても困難なんです。

会議では、いろんな意見が交わされていたんですけど、ソーシャルメディアを運営する企業の取り組みに興味深いものがありました。

フェイスブックの担当者は、ユーザーがある記事を読もうとした時に、関連記事として反対の立場の記事ですとか、その記事に関連するファクトチェックの結果を選択肢として表示する取り組みを始めると紹介しました。

これがうまく機能すれば、SNS上でも、多様な見方や考え方に触れるきっかけになるかもしれません。

ソーシャルメディアが発達した今、ファクトチェックの対象には、我々マスメディアの記事も含まれています。

今回の取材を通して、改めて事実を伝えることに真摯に向き合わなければならないと感じました。