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本格的に始まったイギリスのEU離脱協議 ワールドリポート

7月19日放送「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:イギリスのEU(ヨーロッパ連合)からの離脱について話し合う直接協議が、17日からベルギーで始まりました。

今回が事実上の初めての本格的な協議ですが、イギリスのメイ政権内では離脱交渉をめぐる閣僚間の対立が激化するなど不安の声が上がっています。

ロンドン支局税所記者とお伝えします。

いよいよ本格的な話し合いが始まったということですが、まずどのような議論から話し合いを始めるんでしょうか。

 

税所:交渉の第一段階では、未払いとなっているEUの予算に対するイギリスの分担金などこちらのメディアは手切れ金と呼んでいる問題、そしてイギリスやEUで暮らすそれぞれの市民の権利をどう守るかという問題、さらにはEUの中でイギリスと唯一国境を接していますアイルランドの問題について重要な焦点になると見られています。

EU側はこの三つの分野で進展がないとイギリスが強く求めている自由貿易協定の協議に進めないと主張しておりまして、今後の交渉を占う上で、極めて重要な問題となっています。

ところが、17日に始まりました会合では、分厚い書類の束を手にして交渉のテーブルに着くEU側の交渉官とは対照的に、イギリスの交渉チームを率いるデービス大臣は手ぶらで出席した上に数時間の後にロンドンに戻ってしまいました。

メディアはイギリス側の準備が足りないのではないかと指摘していまして、交渉の先行きの不透明さを浮かび上がらせる一幕となりました。

 

キャスター:そんな中、イギリスのメイ首相の閣僚の間で不協和音が聞こえてきているということですけど。

 

税所:先月の総選挙で敗北したメイ首相の求心力の低下というのは著しいものがありまして、ポストメイ首相は誰かといった論評が連日取り沙汰されるなど政権内の権力闘争は激しさを増しています。

それに伴い離脱派と残留派の対立も表面化してしまっているんです。

メイ首相は離脱交渉を成功させるためにもビジネス界の意見にも耳を傾けようとするなど、これまでの強硬姿勢からは一転和らぐ兆しも見せているんですけど、離脱を何としても進めようという離脱強硬派と言われている人にとってみると、こうした首相の方針というのは不満のようです。

残留派の代表とみられるハモンド代表の閣議での発言がメディアにリークされ、業を煮やしたハモンド氏がテレビで反論するなど、閣僚の中の対立というのは今や国民の目にも明らかになっています。

 

キャスター:とても国が一丸となって離脱交渉に力を注ぐ、理想は一枚岩なんでしょうけど、そういった環境にはなっていないようですね。

 

税所:今もし、メイ政権が崩壊し、また総選挙を行うことにでもなりましたら、離脱交渉は2年が期限ですので、この交渉破綻するのではないかと言われています。

仮に政権がこのまま維持されたとしましても、離脱交渉の方針という根本的なスタンスの議論にエネルギーを取られ、交渉の本質ですとか細部まで目を配れるかという疑問も湧いてきます。

野党労働党からは、この1年ほとんど進捗がないのではないかと不安と驚きが混じったような声が上がっています。

イギリスとEUは、今年の秋口までに月に1週間のペースで直接協議を続ける予定なんですが、国内のゴタゴタを抱えながら離脱交渉を指揮していけるのか、メイ首相にとっては内憂外患の夏となりそうです。