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節目の年、どうなる日中関係 ワールドリポート

7月19日放送「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:日中関係の今後の展望について、中国総局の高木記者に聞きます。

今年は日中双方にとって節目の年にあたるとのことですけど、両国関係は今どんな状態にあるんでしょうか。

 

高木:今年は、1972年に北京で当時の田中角栄総理大臣と周恩来首相が日中共同声明に調印して日中の国交が正常化してから45周年にあたるんです。

日中関係は、5年前に政府が沖縄県尖閣諸島を国有化したことで一時極度に悪化しましたが、その後は国際会議に合わせて年に1・2度首脳会談を行うところまで回復しています。

最近は安倍総理大臣が習近平国家主席肝いりの経済圏構想一帯一路に協力姿勢を示し、中国側もこれを歓迎しました。

今月ドイツでG20に合わせて開かれた日中首脳会談は、中国側が会場を設定したんですが、両国の国旗が映像に映り込む場所に置かれました。

ここ数年では初めてのことでして、関係改善の表れだと認められています。

一方で今月後半に東京で開催される方向で調整が進められていた日中韓3か国の首脳会議は仕切り直しとなったほか、首脳の相互訪問も長く実現しておらず、日中関係は一進一退が続いているという状況です。

 

キャスター:良い兆候がありながら、本格的な関係改善とはいかない。

これはなぜなんでしょうか。

 

高木:理由は二つあります。

ひとつは、中国側が安倍政権はいずれ憲法改正に踏み出して、アジアの安全保障環境が大きく変わるのではないかと警戒していることがあります。

もうひとつは、中国では5年に1度の共産党大会が今年後半に控えていまして、党指導部にはデリケートな日中関係でリスクを犯したくないという計算が働いていることがあるんです。

さらに中国を取り巻く状況も厳しさを増しています。

北朝鮮の核開発問題では、アメリカのトランプ政権から働きが足りないと圧力をかけられていますし、韓国とはミサイル迎撃システムTHAADの配備をめぐって対立しています。

最近は国境線をめぐってインドとの間で両軍が睨み合う事態も起きていまして、実はこうした問題への対応を優先せざるを得ないという事情もあるんです。

 

キャスター:そうしますと今後の日中関係ですが、さらなる改善というのはすぐには期待できないのではないですか。

 

高木:私は共産党大会が終われば十分期待できるのではないかと思います。

日中韓3か国の首脳会議を年内に開催できれば安倍総理大臣の訪中、そして習近平国家主席の訪日という次の展開が見えてくる可能性があります。

すでに党の核心にまで上り詰めた習近平国家主席は、党大会で権力基盤を一段と強めると見られ、思い切った決断がしやすくなります。

また、中国共産党が一党支配体制を維持していく上で重要なのは、何よりも経済の発展です。

中国経済の減速間が顕著になる中、すでに2万社を超える企業が進出している日本の重要性は増しています。

さらに日本を訪れる中国人観光客が増えたことで日本への理解が深まっていることもあります。

日中関係の発展のカギは、こうした状況を互いに認識し、一進一退の膠着した状態を打ち破るプラスの推進力にいかに変えていけるかどうかだと思います。

来年は日中平和友好条約の締結から40周年にあたります。

日中双方の指導者が、前に踏み出す決断をするのか、注目されます。