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なんでも”差別”という論調が、新たな差別を生んでいる 山田五郎

7月20日放送「荒川強啓デイ・キャッチ」(TBSラジオ)

 

山田五郎

民進党蓮舫代表が18日にご自身の二重国籍問題を釈明するために戸籍の一部を開示して記者会見を行いましたね。

これに対して戸籍開示の前例を作るのは差別や排外主義を強める恐れがあると心配するような意見もありまして、さらにこの問題自体が差別や排外主義の表れであるかのようにおっしゃる方までいらっしゃるんですけど、それはとんでもない誤解だと思うんですよ。

この問題自体は別に差別とか排外主義とは全然関係ないんじゃないかと思うんです。

そもそもは、去年の秋の民進党の党首選挙の前に、蓮舫さんがお父様の母国である台湾との二重国籍になってるんじゃないかと指摘されたことに始まりますよね。

蓮舫さんは、17歳の時に日本国籍を選択したわけで、だからこそ国会議員にもなれて、日本国籍があることは間違いないんですけど、その時に台湾籍あるいは中国籍を抹消していないのではないかと言われたわけですよね。

そのどこが問題かというと、ご存知のように日本は原則として二重国籍を認めない国籍唯一の原則を取っているから、国籍法の第16条で日本国籍の選択を宣言した人は外国国籍の離脱に努めなければならないと、これは努力義務なんですけどね、定められています。

罰則のない努力義務とはいえ、もし蓮舫さんが二重国籍なら、その法律に定められた努力義務を怠っているということは、国会議員としてさらに首相になる可能性を持つ政党代表に立候補するに際してどうなの?みたいな、そういう指摘だったわけです。

だからこれは、差別とか排外主義でもなんでもなくて、単なる法令順守の問題であり、蓮舫さん個人の問題なんですよ。

例えば、年金未払いなんじゃないですか、と言われたのと変わらないことなんですよ。

結論を言いますと、指摘を受けた時点では確かに二重国籍になっていたわけですよね。

蓮舫さんもそれを認めたと。

だけど、その後の対応がちょっと個人的に不可解で、民進党は多様性のある社会を推進すると言ってるわけですよね。

蓮舫さんご自身も、かつてはご自身が二重のアイデンティティを持つことが自分の強みであるというようなことを何度も発言されているわけですよ。

だとしたら、日本もこれからは二重国籍を認めるべきだと思うと、さらにそのことに対して罰則もないし、そのことで党首になることを法律に禁じられているわけではないわけだから、私はあえてこのままで行きますと、そう言うのかなと思ったんですよ。

そうしたら、そうじゃなかったですよね。

これは単なる手続き上のミスで、自分は二重国籍と思ってなかったと言って、その台湾籍を離脱するための国籍選択宣言を届け出たわけですよ。

それはそれで、ずいぶん悩まれての決断だと思うんですけど、それならそれで、私はご指摘の通り離脱の手続きを取っていませんでした、なのでこうしてこの通りになりましたと、はっきりおっしゃったら良かったと思うんですよ。

その報告だけで良かったんですよ。

それをおかしな感じで、最初は9月に届けましたと言ってて、そうしたら法務大臣から台湾からのそういうのは受け付けないと言われたら、やっぱり済んでませんとか、10月でしたとか。

過去にご自身は、二重国籍だと何度も発言されてるんですよ。

ということは、それは知ってたんじゃないの、知らないはずないんじゃないのという指摘もあって、それに対しても明確な回答を避けてこられたんですよ。

結果、与党の誤魔化しは追求するのに、自分自身の問題は誤魔化すのかみたいな追求を受けてきて、今回の都議選で民進党が大敗したのを受けて、党内からも批判の声が上がって、今回の戸籍の一部開示という、言って見ればそこまでやる必要ないことまでして、記者会見に及んだということですよね。

だから本来は、問題自体は法律上の努力義務をしてませんよということの指摘に過ぎなくて、それを蓮舫さんの対応が不可解だったりして、問題をこじらせたというだけの話なんですよ。

「今離脱しました」、「そうですか」で終わりなんです。

そういう方法をとったんですね、私はあえて二重国籍で行くかと思ってましたけど、みたいな話なんですよ。

ただ、国籍が絡む問題というだけで、すぐ差別だとか排外主義の問題にしたがってるとしか思えない人が必ず出てくるんですよ。

18日の記者会見の時も、明らかにそういう方向の話に誘導しようとしているとしか思えない質問とかあるんですよね。

記者の方なんですけど、ご本人は多様性を認める社会を作るために差別と戦っていらっしゃるおつもりなんでしょうけど、私は逆になんでもかんでもそうやって差別にしてしまう論調こそが、よりたちの悪い差別を作りだしてるんじゃないかという気がしてならないですね。

やっぱり国籍だとか民族だとか身分だとかが絡む問題になると、すぐに差別だとか多様性だとかって叩く論調って、いくらそういうこと言ったって、面倒臭いから触らないようにしようってタブー視する風潮しか生まないですよ。

この面倒臭いから触らないようにしようのタブー視する風潮が浸透しすぎると、逆に日本人に許されないことがどうして外国籍の人には許されるんだという事態を生じさせかねないです。

そうなってくるとさらに、残念なことにその状況を逆手にとって悪用する人も出てくるわけですよ。

さらに、表立って言えないタブーになっちゃうから、今度は逆にネット上とかで陰口とかが過激化するし、根も葉もない陰謀論的な噂とかもはびこるわけですよ。

だからタブー化することでいいことはひとつもないわけですよ。

最近のヘイトスピーチっていうのは、まさにこういう状況から生まれてると思うんですよ。

だからヘイトスピーチって、異質なものを排除しようとする差別意識だとかって言うんですけど、最近のヘイトスピーチの根っこにあるのは、そう言う異質なものを排除しようってことだけじゃなくて、むしろなんで異質な人たちが優遇されて自分たちが損をするんだっていう不公平感が一番の根っこだと思うんですよ。

ただ単に自分と違うから差別しようとか、そんなこと思う人は、いないとは言わないけど、そんなに多くないですよ。

なんであの人たちはそれOKなの?みたいな。

その不公平感こそがヘイトスピーチを生んでると思うんですよね。

これは日本に限らず、世界的な風潮で、アメリカの大統領選の時にトランプ大統領が勝ったことをリベラル派の新聞が読めなかった一因というのは、ここですよ。

行き過ぎた政治的な正しさが、逆に不公平感を生んでるということが、なかなかご本人たちわからないんですよね。

本当に多様で平等な社会というのは、国籍や民族や身分に関係なく、みんなが同じ法律に従って、間違ったことをしている人がいたら、間違ってると誰に対しても堂々と表立って言える社会というのが、本当の多様な社会だと思うんですよ。

リベラル派を自認されているメディアや論客の方々に、是非一度ご自身の胸に問いかけてみてほしいんですよ。

そのご自身の意識の高さとか政治的正しさをアピールするために、なんでもかんでも差別と見なしたがっていませんかというのが一点ですよ。

それから、なんでもかんでも差別だとか叩く論調こそが一番タチの悪い差別を作り出してるかもしれないということに気づいていらっしゃいますか?

この二つを問いかけたいですね。