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うなぎの資源保護の状態について ニュースアップ

7月25日放送 「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:今日は、土用の丑の日です。

今年は例年に比べてうなぎの価格は下がり気味ですが、資源保護の状況はどうなっているのか、合瀬解説委員に聞きます。

合瀬さん、今年は去年よりはうなぎは安いようですね。

 

合瀬:安いとは言っても、スーパーなどで聞いてみますと、一尾あたり1800円ぐらいする国産うなぎの蒲焼きですから、それでも去年に比べて1割から2割ほど安くなってるんです。

と言うのも、私たちが食べるうなぎはほとんどが、稚魚のシラスウナギを川の河口などで採取して、それを半年から一年かけて養殖したものなんです。

そのシラスウナギが今年はシーズン当初から豊漁で、去年に比べて4割近く下がって取引されています。

中国や台湾から輸入されるうなぎの価格も下がっていまして、この夏の暑さもあって、売れ行きは好調のようです。

 

キャスター:高いとはいえ、ちょっとありつけそうかな。

消費者としてはありがたいですね。

 

合瀬:そうなんですが、確かにシラスウナギの漁獲量を見てみますと、5年前の歴史的な不漁と比べると今年は15トンと、若干取れる量は増えているんですが、昭和40年代後半には100トン以上取れていたシラスウナギですから、現在の漁獲量はかつての6分の1と、とても安心できる状況ではないんです。

しかも、資源保護のための取り組みは十分進んでいません。

水産庁は、シラスウナギの資源を守るために養殖の盛んな中国・韓国・台湾と法的拘束力のある取り組みを5年前から進めているんですが、3年前から中国が会議を欠席する事態が続いているんです。

また国内でも、養殖事業者を届出制にして養殖できる数量を制限することでシラスウナギの保護につなげようとしているんですが、そもそもシラスウナギの流通の実態がわかっていないんです。

実は水産庁は養殖で育てられているシラスウナギの数と都道府県が許可しているシラスウナギの採取量を比較してみたところ、数が合わない状態が続いているんです。

 

キャスター:なぜそんなことが起きるんでしょうか。

 

合瀬:流通が複雑なんです。

シラスウナギの採取については、都道府県がこれを許可制にして採取した数を報告させるようにしているんですが、そもそもシラスウナギは長さ6センチで、重さ0.2グラムと、爪楊枝程度しかないんです。

ごく少量の水があればどこでも持ち運びできるんです。

しかも、採取したシラスウナギは集荷業者に集められて、複数の流通業者を経由して養殖業者に売られて行きます。

このため、どこでも誰がどういうふうに取っているのか把握できませんで、結局密漁を許す事態になっているんです。

 

キャスター:となりますと、資源的にはまだまだ不安な状況ということですか。

 

合瀬:資源が危機的な状況であるというのは、ほとんど変わっていないと考えるべきだと思います。

ニホンウナギをめぐっては、去年のワシントン条約の会議で、規制の対象にはなりませんでしたが、2年後の会議に向けて流通や生産の実態を調査することが決まっています。

土用の丑の日にこんな話はしたくないんですが、うなぎが安くなったと喜んでいる状況ではなくて、日本人がうなぎを食べ尽くしていると指摘されないように資源保護の取り組みをしっかりと進めて行くことが大切だと思います。