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閉会中審査、果たせたか説明責任 ニュース解説

7月25日放送  「先読み!夕方ニュース」(NHKラジオ)

解説:伊藤解説委員

 

キャスター:衆参両院の予算委員会で昨日と今日の二日間に渡って閉会中審査が行われました。

伊藤さん、安倍総理大臣が低姿勢だったという印象があるんですが、どう見ましたか。

 

伊藤:確かにそうですね。

これまでの答弁とは大きく変わったという印象です。

野党側の厳しい追及に声を荒らげるようなことはありませんでした。

特に注目すべきは、加計学園の問題で、安倍総理大臣自身が

「友人が関わることでもあり、国民から疑念の目が向けられることがもっともなことだ」と

「これまでの答弁でその観点が欠けていた」と

「国民の視点に立って丁寧に説明を重ねる努力を続ける」と反省の言葉を口にしたんです。

一方で、加計学園獣医学部新設を申請してると知ったのは、今治市での事業が正式に決まった今年の1月20日だったこと、加計理事長から便宜を図るよう頼まれたことはなく、個別の案件について支持したことはない、とこれはこれまで通りの内容でした。

 

キャスター:新たな論点になったのは、安倍総理大臣が加計学園獣医学部新設の計画を知った時期ということですね。

 

伊藤:安倍総理大臣は今年の1月になって初めて知ったという点について、野党側は安倍総理大臣と加計理事長の親しい関係から、にわかには信じられないと、これまでの答弁と違うということで、事実関係の追及が続いてきたんです。

安倍総理大臣は、今治市が提案していた事業者の加計学園という報告は受けていなかったと、改めて説明したんですが、これまでの答弁に混同があったということを訂正して詫びるという場面もありました。

 

キャスター:今日も出てきました前川前文部科学次官、それから官邸、内閣府の主張ですけど、これ相変わらず平行線のままでしたね。

 

伊藤:そうでしたね。

対立は埋まらなかったということですね。

前川前次官は、去年の9月、和泉総理大臣補佐官から「総理が言えないから、私が変わって言う」と言われたと、これは加計学園のことだと確信したと、重ねて述べています。

これに対して、初めてこの問題で国会で答弁した、和泉総理大臣補佐官は「事務次官としてしっかりとフォローしてほしい」などとは言ったんだけど、そう言う極端な話をした記憶は全くないと「言っていない」と反論したんです。

藤原内閣府の前審議官ですけど、「そう言う内容はつたえていない」と「趣旨と違う受け止めを与えたのなら残念」と述べるなど、前次官と官邸内閣府の主張は、対立して平行線をたどったままでした。

言った言わないと言う水掛け論は、記憶を補強する資料なり当時の関係者から話を聞くなりの努力がさらに求められると思います。

 

キャスター:もうひとつの対立点というのも出てきたんですけど、愛媛県の加戸前知事が参考人として出席しましたね。

旧文部省の官房長を務めた方ですけど、前川前次官との主張はやはり対立しましたね。

 

伊藤:前川前次官の主張というのは、一連の問題では行政が歪められたと、最初から加計学園ありきだったということなんですね。

一方で旧文部省では前川前次官の先輩にあたる加戸前知事は、国家戦略特区でようやく実現した獣医学部の新設は、今治市民・愛媛県民が夢と希望を託したものだったと。

実現できたのは、他の大学にもたくさん当たったんだけどいい反応がなかったと。

結果的には加計学園だけだったんだということで、この判断は正しかったという主張です。

さらに、加戸前知事の主張は、いわば規制改革について、文部科学省抵抗勢力ではなかったかという批判にもなっているわけで、対立が文部科学省OBの間でも拡散してきていると。

獣医学部の新設についての評価も分かれているという印象を受けました。

 

キャスター:この二日間の閉会中審査を見て、記憶がないといった答弁がすごく多かったように思いますし、何かスッキリしない、うやむやなままだという気がするんですけど、これから国会の議論はどのようになっていくんでしょうか。

 

伊藤:安倍政権としては、丁寧に説明を尽くして事態の早期収集を図りたいところだと思うんですが、この二日間の審査の状況を見ても、国民の疑念を払拭し切れたとは言えないと思います。

民進党共産党などは引き続き、国会の閉会中審査あるいは関係者の証人喚問を求めて、攻勢を強める構えですので、与野党の対立が一段と強まる見通しです。

安倍総理大臣は来週には、内閣改造自民党の役員人事を行う方針なんですが、都議会議員選挙での大敗、内閣支持率の急落という厳しい局面を打開するために、人心の一身を図りたいというところなんでしょうけど、大臣を交代させるというだけでは、逆に疑惑隠しと言われかねない、野党の追及は治らないと思います。

ここで肝心なのは、国民世論が納得するかどうかという点ですし、やはり実態を明らかにするための努力をさらに続けていくこと、そして与野党とも今後の議論をどのように進めていくか世論の動向を見極めながらの駆け引きという局面が続くことになりそうです。