読むラジオニュース

ラジオニュース書き起こし

北朝鮮のミサイルに備えるアメリカハワイ州 ワールドリポート

7月26日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:核・ミサイル開発を継続させる北朝鮮に備えたアメリカハワイ州の動きについて、現地で取材したロサンゼルス支局の神津記者に聞きます。

ハワイ州で先週大変注目を集めた発表がありましたね。

 

神津:ハワイ州は、北朝鮮が将来核弾頭を搭載したICBM大陸間弾道ミサイル)をアメリカに向けて発射した場合に備え、住民や観光客を対象とした指針を作成しました。

これはアメリカの50州の中で初めてで、北朝鮮の脅威を本気で捉えた上での対策として話題になりました。

 

キャスター:これは具体的にはどのような指針なんでしょうか。

 

神津:ハワイ州緊急事態管理局が今回明らかにして指針では、緊急事態における周知警報システムの改善、詳細な分析と計画、そして有事の際の住民の準備と対応の促進の三つの項目に分かれて対応策が検討されています。

このうち、周知警報システムについては、核ミサイルが飛来した場合、攻撃警報と呼ばれる住民に避難を促す警報を、今年11月をめどに整備するとしています。

また、住民の準備と対応については、自宅や屋外にいた際に、どのような対応を取るべきかなど、初期避難について説明するガイドラインを刷新して配布するとのことです。

 

キャスター:自体がそこまで緊迫しているということなんでしょうか。

 

神津:北朝鮮の脅威が増していることは事実です。

北朝鮮は今月、ICBMの発射実験に初めて成功したと発表しました。

これに対して、アメリカのジョーンズ・ホプキンス大学の研究グループは、このミサイルがハワイとアラスカを射程内に収めていると分析しています。

またアメリカ政府の当局者は19日、北朝鮮平壌郊外で弾道ミサイルの発射実験に関連する機材や人の動きを確認したことを明らかにしていて、今後およそ2週間でICBM級の弾道ミサイルの発射に踏み切る可能性があるとしています。

しかしその一方で、今回指針を作成した担当者たちが強調していたのが、今回の措置はあくまでも万が一の措置だということです。

私が取材したハワイ州緊急事態管理局のバーン・ミヤギ局長は、現段階では北朝鮮がハワイを標的にミサイル攻撃を成功させる可能性は非常に低いと考えているが、無視することはできず、常に対応策を更新しないといけないと考えている。一般の人々が、万が一の際に、どのように行動するべきかを理解してもらいたいと指針作成の趣旨について話していました。

 

キャスター:今回の対策に対して現地の人たちはどのように受け止めていらっしゃいますか。

 

神津:私は現地で住民や観光客に話を聞きましたが、様々な意見があるというのが実感です。

横浜市から来た日本人女性は、核による攻撃がどのようにあるかは誰も予測できないので、万が一のために州が方針を示してくれるのは安心だと肯定的に受け止めていました。

一方で、地元に住む60代の男性は、核ミサイルに備えることは大事だと思うが、北朝鮮の脅威はそこまで高くないと思うし、少し大げさな措置だと思うと話していました。

ハワイ州は観光業が大きな柱で、いわゆる風評被害を懸念する声は早速上がっています。

そのことについて、日系人のミヤギ局長は、カタコトの日本語で知らんぷりはしないと話した上で、人々は十分賢いんです。しっかり伝えれば風評被害に惑わされず理解してくれますと話していたのが印象的でした。

今後ハワイ州では、核ミサイルを想定した新しい警報システムの訓練を行うなど、対策を進めていくことになります。

正しく恐れることの大切さを、どう伝え理解を得るか、それが今後のハワイ州の課題になります。