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深まる日本とベトナムの海上防衛協力 ワールドリポート

7月25日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:南シナ海で海洋進出の動きを強める中国に対抗しようと、ベトナムが海上の安全保障分野で日本との協力を深めています。

ハノイ支局の横田記者に聞きます。

日本とベトナムの安全保障分野での協力はこれまでもあったと思うんですけど、ここに来てさらに強まってるんですね。

 

横田:日本とベトナムの海上の安全保障分野での協力強化の動きは、今年に入って急速に目立っています。

今年5月、海上自衛隊最大級の護衛艦いずもが初めて南シナ海に面したベトナム南部の要衝カムラン湾に寄港したのに続き、先月には中部のダナンで日本の海上保安庁ベトナムの海上警察による合同の訓練が行われました。

この訓練は、中国などの外国漁船による領海での違法な操業が相次いでいるベトナム側からの要望に基づいて、初めて行われたもので、一昨年日本からベトナム海上警察に譲渡された巡視船も参加しました。

訓練では、双方の船にお互いの担当者が乗り込み、違法操業している漁船を発見した場合は、まず写真や動画で証拠を押さえた上で、船を止めるよう求めることなど、法に基づいた対応の必要性について、ひとつひとつ確認していました。

こうした協力は、これまで中国を過度に刺激することは避けたいというベトナム側の思惑からなかなか進んで来ませんでしたが、ここに来て、日本ベトナム双方の思惑が一致したかたちとなっています。

 

キャスター:なぜベトナム側は今そうした対応を取るようになったのですか。

 

横田:理由は大きく二つあります。

ひとつは、フィリピンのドゥテルテ政権の誕生です。

フィリピンは、去年7月国際的な救済裁判で、南シナ海をめぐる中国の主張を全面的に否定した判断を勝ち取りました。

しかし去年6月に就任したドゥテルテ大統領は、中国との関係を改善して経済支援を取り付けたい関係で、南シナ海の問題にはこだわらない姿勢を示しています。

この救済裁判についても、今年4月のASEANの首脳会議では、議題にしないと冒頭に宣言するなど、ベトナムとしては南シナ海の領有権をめぐってベトナムとともに中国と対立していたフィリピンを失ったかたちとなっているんです。

そしてもうひとつは、アメリカのトランプ政権の南シナ海政策に対する懸念があります。

トランプ大統領は、核ミサイル開発を推し進める北朝鮮への対応をめぐって、中国の習近平国家主席に協力を求めていて、ベトナム政府はこうした動きの中でアメリカが中国に配慮して、南シナ海での圧力を弱めるのではないかと不安視しているんです。

 

キャスター:今後もベトナムは日本との関係強化に動くんでしょうか。

 

横田:先月日本を訪れたベトナムのフック首相は、安倍総理大臣と会談し、日本が新たに6隻の新造巡視船をベトナムに供与することで合意しています。

南シナ海をめぐる現在の状況について、国際情勢に詳しいベトナムの専門家も、アメリカが南シナ海への関与を押さえれば、地域のパワーバランスに大きな影響を与えて、不安定化してしまう。

ベトナムとしては、利害を共有する日本と長期的に関係を深めていく必要があると話していました。

中国が南シナ海での海洋進出の動きを強める限り、そうした中国の動きを念頭に、今後も日本とベトナムの協力強化の動きは続くものとみられます。