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映画「軍艦島」韓国で公開

7月26日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:韓国で「軍艦島」と言う映画が今日から公開されます。

ソウル支局の長野記者に聞きます。

軍艦島は長崎の端島炭鉱の通称で廃墟となった建物が立ち並ぶ独特の景観で有名ですけど、映画はどのような内容なんでしょうか。

 

長野:映画は軍艦島を舞台にした韓国のアクション映画です。

終戦間際、日本軍が島で過酷な労働を強いていた朝鮮半島出身の徴用工など400人の存在を隠すため、炭鉱に閉じ込めて爆破しようとしたのに対し、徴用工たちが脱出を試みると言う内容です。

先週メディア向けの試写会で映画を見たのですが、朝鮮半島出身の人たちに労働を強いる炭鉱経営者や日本兵が登場し、軍艦島が地獄の島と位置付けられています。

一昨年、軍艦島を含めて23の資産が明治日本の産業革命遺産としてユネスコ世界遺産に登録されていますから、日本と韓国では軍艦島への認識は温度差が大きいと感じます。

映画には、韓流スターも登場することからヒットが予想されますが、歴史的に確認されていない内容が含まれていると言う指摘も上がっています。

 

キャスター:映画に登場するような徴用工をめぐっては、韓国で裁判が起こされていますね。

 

長野:韓国では太平洋戦争中日本の工場や炭鉱に徴用された元労働者や遺族が未払いの賃金があるとして日本企業を相手取って損害賠償を求める訴えを相次いで起こしています。

元労働者やその遺族らそれに訴訟を支援している韓国の市民団体は、映画によってこれまで過去の歴史について詳しく知らなかった人たちも知るようになるとして、公開を歓迎しています。

作品の上映によって、韓国でこの問題への関心が一層高まることも予想されます。

ただ日本政府は、徴用された元労働者などの個人を含め請求権に関わる問題は、1965年の日韓国交正常化に伴って両国間で結ばれた協定で完全かつ最終的に解決されたとする立場です。

 

キャスター:韓国政府は請求権の問題についてはどのような立場を取ってきましたか。

 

長野:韓国政府もかつて被害者への補償は韓国政府が責任を持つとする立場を示していました。

2005年盧武鉉元大統領の時、日本の植民地支配をめぐっては、日韓国交正常化交渉の中で個人に対する補償は韓国政府が責任を持つことで両国政府が合意していたことが、韓国側の外交文書でも明らかになったからです。

しかし5年前に、韓国の裁判所が個人の請求権は消滅していないとする初めての判断を示しました。

これ以降、日本企業の敗訴が続いていますが、日本企業は控訴していて、最高裁判所で確定した判決はまだありません。

 

キャスター:文在寅大統領は、徴用工の問題についてはどのような立場なんでしょうか。

 

長野:実は文在寅大統領は、就任してからまだ2ヶ月ということもあって、徴用工の問題について明確な立場を示していません。

今は慰安婦問題が日韓の懸案としてクローズアップされていますので、現時点ではこれ以上日韓関係を複雑にしたくないという考えがあるのかもしれません。

ただ文大統領は、徴用工への補償は韓国政府が責任を持つとした盧武鉉元大統領の側近中の側近でした。

かつての韓国政府の立場との整合性や韓国世論も踏まえていずれは自らの姿勢を示すことになりそうです。

それだけに、今日から公開される映画「軍艦島」が韓国国内でどのように受け止められるか注目されます。