イラン、ロウハニ政権の2期目の課題
7月26日放送 「NHKマイあさラジオ」
キャスター:イランでは5月の大統領選挙で再選された穏健派のロウハニ大統領が来月初め2期目の政権を発足させます。
欧米と対話を進めて歴史的なイラン核合意を実現させたロウハニ大統領ですが難問が待っているようです。
出川解説委員に聞きます。
まずカギになります、イラン核合意ですけど、改めてどんな合意だったのか説明してください。
出川:イランでは、前回4年前の大統領選挙で、対話路線を掲げたロウハニ大統領が就任して、アメリカなど主要6か国との厳しい交渉の末、おととし7月歴史的なイラン核合意を実現させました。
これはイランが核開発を大幅に制限する代わりに国際社会がイランへの経済制裁を解除するという内容で、イランが国際社会に復帰する道を開いたんです。
キャスター:そのロウハニ大統領ですけど、2期目の難問というのは一体何なんですか。
出川:アメリカのトランプ大統領です。
とにかく、イランが大嫌いで、強く敵視してるからです。
トランプ氏は、オバマ前政権が結んだイラン核合意は、イランによる核兵器開発を阻止できないうえ、制裁解除によってイランに資金を稼ぐ機会を与えてしまうので、最悪の合意だとして、破棄するとまで公約していました。
イランがこれまで核合意を守ってきましたので、さすがに破棄はできませんけど、トランプ政権は現在対イラン政策を全面的に見直しており、様々な圧力をかけています。
キャスター:どんな圧力ですか。
出川:まず、イランのミサイル開発を理由にした制裁の強化です。
トランプ政権は、イランの核開発ではなく、ミサイル開発にかかわった疑いのある企業などに対し、独自の経済制裁を実施しています。
そこには金融制裁も含まれます。
米ドルによる決済ができなくなり、外国企業はイランとの貿易や投資に及び腰になります。
トランプ政権はさらに、イランが世界各地でテロを支援していると非難しており、イランと敵対するサウジアラビアやイスラエルと協力して、対イラン包囲網を作ろうと近隣諸国に呼びかけています。
キャスター:制裁が強化されたり、包囲網が作られたりしますと、ロウハニ政権としては困るわけですね。
出川:国民の多くは核合意によって経済制裁が速やかに解除され、イラン経済が回復すると期待しました。
ところが実際には、制裁解除のペースは遅く、暮らしが良くなったという実感が得られません。
たとえば、15歳から24歳までの若者の失業率なんですが、現在およそ30%と核合意が結ばれる前よりむしろ悪化しています。
もしこうした状態がさらに続きますと、ロウハニ政権への国民の期待が失望に変わって、アメリカを敵視する保守強硬派が勢いを得て、対話路線が挫折する恐れもあります。
キャスター:となりますと、2期目のロウハニ政権は厳しい船出となりそうですね。
出川:ロウハニ大統領にとって、頼みの綱はヨーロッパ諸国です。
イランが核合意を守っていることを評価し、各国の企業が相次いでイランに進出しています。
今月、イランの天然ガス田の開発をめぐって、フランスの大手企業トタルがイランの国営企業との間で非常に大きな契約を結びました。
他の外国企業も後に続く動きを示しています。
ロウハニ大統領は、トランプ政権の圧力に屈せず、引き続き対話路線で外国の資本と技術を導入し、経済を立て直したいと考えています。