小売業へのアマゾンの脅威、最も大きい国は日本
7月26日放送 「森本毅郎・スタンバイ」(TBSラジオ)
トークファイル 渋谷和宏
渋谷:ネット通販の勢いがついている感じです。
日本経済新聞社が、先月下旬に2016年度小売業調査をまとめたんですけど、2年連続で国内の小売市場は縮小しているんですけど、通販の売上高は前の年に比べて11.3%も伸びました。
とりわけ成長著しいのが、最大手のアマゾンジャパン。
売上高は前年度比17.5%増の1兆1747億円。
初めて1兆円の大台を突破しました。
日本の小売業では、百貨店大手ジェイフロントリテーリング(大丸松坂屋)を抜きまして、1気に6位に浮上したということです。
セブンアンドアイホールディングスなど多くの小売業は減収になっているんですが、それとは対照的に飛ぶ鳥を落とす勢いなんです。
そのアマゾンについてとて、も気になる調査がこのほど発表されました。
アマゾンが、私たちの買い物行動とか小売店の先行きに与える影響は日本が世界で一番大きいという調査なんです。
調査を行なったのは、英国のロンドンに拠点を持つ大手コンサルティング会社のプライスウォーターハウスクーパース(PWC)なんですけど、こちらが日本・アメリカ・ドイツ・ブラジルなど世界29カ国のオンラインで買い物をしている人2万4471人に対してアンケートを実施しました。
ネット通販をしている人の中でアマゾンで買い物をしたことがある人の割合、これが世界29カ国の平均は56%でした。
ところが日本では90%超でした。
ですからネット通販をしている人のほとんどがアマゾンの経験者ということになります。
アマゾンの存在感が日本では突出しているということです。
さらに、アマゾンの登場によって小売店つまりリアル店舗での買い物の頻度が減っている人の割合が、日本は調査対象の39%に達しました。
世界29カ国の平均は28%なので、日本は10ポイント以上上回っています。
ちなみに日本に次いで高かったのが、アマゾンの本拠地であるアメリカ、こちらが37%、3位がブラジルで35%、4位はドイツで34%ということでした。
ですので日本が一番アマゾンによって小売店の売り上げあるいは買い物の頻度が食われてるということです。
しかもこれからさらにアマゾンが伸びていくとすると、さらなる影響が出てくるということです。
実際にアメリカでは、アマゾンの急成長で小売店の閉店や倒産が急増しています。
大手百貨店のシェアーズなんですけど、今年1月全米でおよそ150店舗の閉鎖を計画していると発表しました。
2月にはやはり大手百貨店のジェイシーペニーが130から140店舗の閉鎖を予定している、希望退職およそ6000人を募ると発表しました。
さらに3月には、カジュアル衣料専門店のアバクロが60店の閉鎖を発表。
4月にはラルフローレンがニューヨーク5番街の旗艦店を閉鎖しました。
この閉店・倒産ラッシュは止まらず、金融大手のクレディスイスは今年アメリカでは、去年のおよそ2000店はおろか2008年のリーマンショック時のおよそ6000店をも上回る8600店の小売店が閉鎖すると予測しています。
アメリカではこういう状況で、しかもリアル店舗へのアマゾンの脅威、つまりアマゾンのリアル店舗喰いは日本の方がアメリカより激しい可能性がありますので、今後日本でもこういうことが起こりかねないです。
リスクは出ているということです。
実際に日本経済新聞の小売業調査では、小売の大手の売上高、イトーヨーカ堂が前年度比2.7%減、三越伊勢丹ホールディングスが2.6%減、ジェイフロントリテーリングが4.7%減、ヤマダ電機が3.1%減と、業態に関係なく売り上げが落ちてるんです。
ですので、逆風がさらに強まるという懸念は否定できないです。
さらにPWCの調査によると、アマゾンは他のネット通販も喰っているという調査も出ていまして、PWCのアンケートでは、アマゾンの登場で他のネット通販での買い物の頻度が減った人の割合が世界29カ国の平均で18%に達し、アマゾンでしか買い物をしない人の割合もすでに10%に登っているというところです。
どうすればいいのか、このPWCはこう言ってるんです。
「小売業者は革新的な商品を提供して、ニッチ市場つまり隙間市場で高い評価を受けるべきだ」
「徹底的にコストダウンすべきだ」
どうもこれって迫力不足というか、「規模を縮小してアマゾンが相手にしない隙間商品を細々と」と言ってるようで、巨人アマゾンへの対抗する術は決定打がないということのようです。
アマゾンは、宅配便が人が不足しているのでなかなかサービスができないと言っているので、自分たちで組織しますと言っているし、できちゃうんですね。
配送頻度ももしかするとさらに間隔を短く、配送スピードを上げる可能性もありますし、アメリカではリアル店舗を買収し始めています。
日本でもそれをするかもしれないということを考えると、アマゾンの脅威は凄そうですね。