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核のごみ地図公表 広がる波紋

7月31日放送  「先読み!夕方ニュース」(NHKラジオ)

解説:水野解説委員

 

キャスター:実際に地図にアクセスして自分の住む町の色分けを確認した方も多いのではないかと思いますが、原発を運転すれば必ず出る放射能レベルが極めて高い廃棄物いわゆる核のごみの地下の処分地の選定に向けて、政府は科学的に候補地となる可能性のある地域を示した地図を公表しました。

この地図にはどんな意味があるのか、核のごみの課題について水野解説委員に聞きます。

水野さん、この地図はどうやって作成されたんですか。

 

水野:まず火山や活断層の周辺、それから資源のある地域は地下の処分場が地震などで破壊されたり、将来資源を求めて掘削される可能性がありますので好ましくないとして候補地から除外されました。

そして、それ以外の地域が好ましい地域とされまして、その中でも沿岸部から20キロ以内の地域は核のごみを船で輸送した場合に陸送しやすいということで可能性がより高い地域に区分されて、濃い緑に塗られています。

その濃い緑の地域なんですが、その面積は国土の3分の1に及びまして、900の自治体が該当しています。

また今回特徴的なのは、国民の理解を得るためとして、電気の大消費地で人口密度の高い都市部も最初から除外することなく、色分けされていまして、例えば東京も世田谷区など23区の西側は濃い緑、つまり候補地となる可能性が高い地域に区分されています。

 

キャスター:濃い緑の地域は今後どうなるんですか。

 

水野:地図の公表に当たって経済産業省は、これはあくまで科学的な特性を示したもので、すぐに処分場の受け入れの判断をお願いするものではないと説明しています。

というのも、この問題は先送りされ続けていまして、取り組みが大きく遅れています。

そこに福島の事故が起きて、原子炉だけでなく核のごみを含む使用済み燃料も メルトダウンが懸念されました。

その危険性が明らかになったわけですね。

現状、全国の原発には1万8千トンに迫る大量の使用済み燃料が溜まり続けていまして、さすがに先送りできないところまで追い詰められて、こういった地図を作成して国民の理解を得て行こうというのが今回の目的でして、今後濃い緑の地域を重点的に政府が働きかけをして、将来的に複数の自治体が処分場に関心を示すということを期待しています。

 

キャスター:この問題は非常に複雑な問題を抱えているんですが、核のごみ、この問題は進展するんでしょうか。

 

水野:地図の提示は、これまで真剣に取り組んでこなかった政府がようやく前面に出て来たといった意味では一定の評価はできると思いますけど、処分場問題のあくまでスタートラインにようやく立ったに過ぎないと考えるべきで、この先かなり困難が予想されます。

すでにこの地図の公表に対して、戸惑いや反発の声が上がっていまして、例えば福島第1原発がある福島県の知事は、福島県が最終処分地になることはあり得ないというコメントを発表していますし、地下処分の研究施設がある北海道も担当者は核のごみの持ち込みは受け入れ難いという姿勢を続けていきたいと話していますし、こういった原子力施設がない岩手県も地下処分については疑問があり処分場は受け入れられないというコメントを発表しています。

 

キャスター:政府が処分場の受け入れを求めないと言っているのに、なぜ今の段階で反発や戸惑いの声が上がってるんですか。

 

水野:根底にあるのは国の原子力政策への不信だと思います。

政府が重大事故が起きないと説明していた原発メルトダウンが起きた、国民や自治体は原子力施設に絶対の安全はないということを目の当たりにして来たわけで、安全性ばかり強調されても、にわかに信じることはできないわけです。

ましてや、安全性は保証されなければならないのは、この先10万年ぐらい立たないと核のごみの放射能レベルが下がらないんですね。

地図を示した今、政府がやるべきことは、この地下処分の安全性について、確実に分かっている点だけではなくて、不確実な点も含めてきちんと説明していくことだと思います。

日本には、毎年のように大きな地震が起きますし、まだ分かっていない活断層もあるとみられます。

活断層を見直されたら、一体どうなるのか。

この対策はあるのか。

10万年先の安全性をどうやって保証するのか。

 こう言った点について、批判的な人も交えて、説明して納得してもらわなければならないと思います。