中国と北朝鮮の貿易を追う
8月2日放送 「NHKマイあさラジオ」
キャスター:北朝鮮は、核・ミサイル開発につながる物資を手に入れるため、中国企業と不正な取引をしているという指摘が絶えません。
北朝鮮と取り引きする中国企業について、中国総局の長綱記者に聞きます。
北朝鮮は中国企業とどのような取り引きをしているのでしょうか。
長綱:国連安全保障理事会の制裁決議では、制裁対象である核・ミサイル開発につながる品目や贅沢品以外の貿易は制限されていません。
このため、中国企業は医療や建設物資・自動車など多岐にわたって北朝鮮への輸出を続けています。
こうしたなかで、問題視されているのが、軍事転用も可能な民生品です。
4月に平壌で行われた軍事パレードを現地で取材したのですが、弾道ミサイルを搭載した一部のトレーラーには、中国のトラックメーカーのロゴが入っていました。
また、先に北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)として発射した火星14型は、移動式の発射台が中国メーカーの木材の運搬車両と形が極めて類似しています。
制裁によって軍事物資の輸入ができない北朝鮮が、民生品を次々と兵器開発に利用しているのです。
キャスター:どのような中国企業が北朝鮮と不正な貿易をしている疑いがあるんでしょうか。
長綱:中朝国境地域にある貿易会社の名前がよく上がります。
先週、中朝貿易の拠点となっている国境地域に足を運んでみました。
手がかりは6月にアメリカのC4ADSという調査機関が公表した報告書です。
この機関の調査報告は、アメリカの政府機関も活用していると言われ、税関記録などの膨大な公表データを緻密に分析したものです。
それによりますと、去年までの3年間に、北朝鮮と取り引きした中国企業の数は5000社あまり、この中で弾道ミサイルの誘導装置に転用が可能なナビゲーション装置を北朝鮮に輸出した疑いがある企業が、名指しで記載されていました。
私は中国の登記情報をもとに、その企業の住所を訪れてみました。
ところがそこにあったのは、全く別の会社でした。
報告書にあった別の企業も尋ねてみました。
場所は2・3年前まで北朝鮮総領事館の出張所が入っていた雑居ビルの一室です。
ここでもたどり着いた先は健康関連の会社でした。
キャスター:つまりは、ペーパーカンパニーだったということですか。
長綱:実態はよくわかりません。
取材先の貿易関係者に聞いたところ、北朝鮮と不正な取り引きをしている会社は、登記上の住所にない場合が多く、容易に所在地がつかめないだろうとのことでした。
その後、これらの企業の代表者の携帯電話の番号がわかったので連絡してみたところ、相手はどうしてこの番号を知っているのかなどと言って、一方的に電話を切られてしまいました。
北朝鮮と不正な貿易をしている疑いがある中国企業に対して、アメリカ政府は近く新たな制裁を科す見通しです。
これに対して、中国政府は、アメリカ政府が国内法に基づいて自国の企業に制裁を科すことに反対だとしています。
北朝鮮をめぐって、国際社会の一致した足並みが揃っているとは言い難く、北朝鮮との取り引きを続ける中国企業への対応が、米中の摩擦の種となっています。