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緊迫する北朝鮮情勢と国連安保理 ワールドリポート

8月1日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:緊迫する北朝鮮情勢と国連についてアメリカ・ニューヨークで国連の取材を担当している佐藤記者に聞きます。

北朝鮮による核・ミサイル開発の脅威が一段と高まっていますが、この問題を話し合ってきたのが国連安全保障理事会ですね。

 

佐藤:安保理北朝鮮問題が本格的に取り上げられたのはこの10年なんですけど、北朝鮮が核・ミサイル開発に突き進む時期とちょうど重なります。

この間に、10本程度の安保理決議が採択採択されているんです。

 

キャスター:しかしその決議にもかかわらず、全く歯止めがかかっていないわけですよね。

 

佐藤:まず挑発を続ける北朝鮮が非難されるべきなんですが、問題の解決を難しくしているのは、北朝鮮を取り巻く大国の利害の不一致なんです。

今回の前、先月4日にあったミサイル発射の後に、安保理では緊急の会合が開かれました。

その時、中国は議長国だったんですけど、無条件という言葉を使って北朝鮮との対話に戻るように主張したんです。

そして制裁の強化を求めるアメリカと鋭く対立しました。

中国にとって北朝鮮は在韓米軍との緩衝地帯という戦略的な存在で、北朝鮮を本気で追い詰めて、政権が崩壊でもしたら、アメリカ軍と中国が国境を接することになりかねません。

さらにロシアも中国に加勢しまして、これまで最低でも安保理メンバー15カ国のコンセンサスで出していた非難声明すら発表できない状態になっているんです。

 

キャスター:ロシアが加勢するのはどういう意味なんでしょうか。

 

佐藤:先ほど大国の利害という言葉を使いましたけど、安保理はそれがぶつかり合う場所でもあるんです。

10年前北京でこの問題を話し合う枠組みだった6カ国協議というのがあって、私も取材したんですけど、その時ロシアは、頻繁に駐在大使が代理出席するなど、あまりこの問題に関心を示しているようには見えませんでした。

 それが最近は、大国として復活しようというプーチン政権のもとで、安保理の場で中国に貸しを作ったりですとか、またアメリカのいう通りにはならないという姿勢を見せつけることで、ロシアの外交力を押し上げようとしてるんです。

 

キャスター:安保理として、事態を打開する手立てはあるんでしょうか。

 

佐藤:難しいですけど、やはり中国とアメリカが歩み寄れるかどうかなんです。

北朝鮮への追加制裁について、アメリカのヘイリー国連大使は、中国による石油の供給と、北朝鮮の航空機や船舶の運行を制限する必要性に言及しています。

しかしこれまでのところ、協議はうまくいっていません。

そしてアメリカは、北朝鮮と取引をしている中国の銀行や企業を制裁対象にするセカンダリーサンクションと言うんですけど、これを持ち出して今度は中国に圧力をかけようとしています。

このヘイリー国連大使は先月30日に「中国はやる気があるのかないのか決めなければならない」と強い言葉で声明を出しまして、中国に北朝鮮への圧力を強化するよう迫ったんです。

ところが中国も負けてはいませんで、劉国連大使が翌日に記者会見を開きまして、「問題の根源はアメリカと北朝鮮の対立であって、中国の責任ではない」と反論しました。

こうしたアメリカと中国の対立で、安保理がなかなか手を打てないのを横目に北朝鮮は着々と核やミサイル開発を進めています。

米中がそれぞれの立場に固執する中で、安保理の機能不全が進むことが懸念されます。