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トランプ政権、人事の刷新の行方は

8月2日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

 キャスター:アメリカのトランプ大統領は、政権運営の要となる大統領主席補佐官を交代させるなど、人事刷新を進めています。

その行方はどうなるのか、アメリカ担当の高橋解説委員に聞きます。

なぜ今、人事刷新が必要なんでしょうか。

 

高橋:トランプ政権の発足から半年あまり経ちますけど、今のホワイトハウスは重要法案、オバマケアの見直しですとか、税制改革などがことごとく実現の目処すら立っていないばかりか、政権の内部にも不協和音が目立つからです。

直接の発端は、ホワイトハウスの広報戦略を統括する責任者に投資家のスカラムッチ氏が起用されたことから始まりました。

その起用に反対したホワイトハウスのスパイサー報道官が辞任、さらにプリーバス主席補佐官もスカラムッチ氏から政権内の情報漏洩に関わっている可能性があると批判され、事実上の更迭に追い込まれました。

ところが、そうした政権内の不協和音が露呈すると、トランプ大統領は態度を反転させ、今度はスカラムッチ氏を更迭、ホワイトハウスの高官が就任からわずか10日ほどでスピード辞任に追い込まれた混迷ぶりは、近年記憶にありません。

 原因はトランプ大統領自身が、主席補佐官という人事がいかに重要であるかを、これまで十分に認識していなかったからではないか、そんな観測もアメリカのメディアは伝えています。

 

キャスター:この大統領主席補佐官、この仕事はどれくらい重要なんでしょうか。

 

高橋:主席補佐官の本来の仕事は、常に大統領の側近くにあって、あらゆる情報に目を光らせ、各省庁との調整にとどまらず、議会との接触の窓口にもなる、いわばホワイトハウスゲートキーパー(門番)です。

その点で、前任のプリーバス氏はかつて、共和党の全国委員長として選挙戦でトランプ大統領を支えてきた人物だけに、大統領の長女イヴァンカ補佐官ですとか、その特殊な上級顧問など大統領の身内にはなにがしかの遠慮もあったんでしょう。

 

キャスター:では後任には、どんな人物がなったわけですか。

 

高橋:後任に起用されたのは、国土安全保障長官を務めていたケリー氏です。

ケリー補佐官は、たとえ大統領の身内であっても、情実など通用しない謹厳実直な人柄で知られています。

軍の海兵隊出身で、実務本位の人物です。

そんなケリー補佐官が厳しい門番のような役目を果たせば、ホワイトハウスの混乱も収集に向かいはずだ、そうした狙いが今回の人事には込められているんでしょう。

 

キャスター:では、そうした大統領の狙い通りに混乱は収まるんでしょうか。

 

高橋:そこは率直に言ってまだわかりません。

と言いますのも、今トランプ大統領は、いわゆるロシア疑惑をめぐって、捜査から身を引いたセッションズ司法長官の対応に不満を隠そうともせず、ツイッターを通じて半ば公然と圧力をかけているからです。

今のところ、セッションズ司法長官は、自ら辞任するつもりはないと言っていますが、もしかすると来週にも始まる議会の夏休み中に何らかの動きがあるかもしれません。

アメリカでは通常閣僚の任命には議会の承認が必要となるんですが、実は議会が長期の休みに入っている間に生じた欠員については、大統領が議会からの承認なしに任命できる制度があるからなんです。

仮に、トランプ大統領がそうした奥の手を駆使して、セッションズ司法長官を解任し、後任に自らの意のままになる別の人物を任命すれば、議会からの反発は必至、混乱は治るどころかむしろ拍車がかかるでしょう。

果たして、トランプ大統領は司法長官の人事にまで手をつけるのかどうか、その行方が次の焦点になりそうです。