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アジアに広がるISの脅威

8月2日放送  「先読み!夕方ニュース」(NHKラジオ)

 

キャスター:ISなど過激派によるテロの脅威が中東やヨーロッパにとどまらず、東南アジアにも広がっています。

先週末には、ISの脅威に対して対策を話し合う会議が、インドネシアで開かれました。

テロの脅威にどう立ち向かえば良いのか、二村解説委員に聞いていきます。

 東南アジアでテロの脅威が広がっているということですが、どれだけ現実味があるんですか。

 

二村:中東やヨーロッパはよく言われているんですが、東南アジアでもいつ大規模なテロが起きてもおかしくないというのが現実なんです。

特にフィリピンでは、ミンダナオ島の情勢が非常に悪化していまして、特にマラウイという人口20万ほどの都市では、今年5月以降ISを支持する過激派組織が都市の一部を占拠しまして、今政府軍との間で激しい戦闘を繰り広げています。

もう死者も600人を超えたということです。

インドネシアでは5月24日、ジャカルタのバスターミナルで爆破テロが起きまして、警察官3人が死亡する事件が起きています。

ちょうどこの頃は、イギリスのマンチェスターのコンサート会場で自爆テロが起きて世界中が衝撃に包まれたんですが、実は東南アジアでもそうした過激派によるとみられる事件が立て続けに起きていました。

これらの地域には日本の企業も進出しているだけに人ごとではないと思います。

 

キャスター:なぜ東南アジアでISなどの過激派が急速に勢力を広げてるんですか。

 

二村:ひとつは政情や治安が不安定な地域でして、もともとイスラム過激派が反政府活動を展開していたことから、ISの影響を受け安かったということが言えます。

それから、イラクやシリアでISが弱体化しているんですけど、それに伴って大量の武器や資金さらに戦闘員が相次いで流入してきているんです。

ISはフィリピンのマラウイを東南アジアの拠点にしようとまでしています。

インターネットでは、軍事訓練の映像を公開しています。

またこれらの地域は多くの島々からなりますので、密輸あるいは密航が後を絶ちませんで、海を渡って移動する戦闘員の取り締まりが難しいということもISの勢力拡大につながっていると言えそうです。

 

キャスター:二村さん、ISと言えば世界中の若者が加わっていましたよね。

それが今、東南アジアに流れてきていると考えればいいんですか。

 

二村:そういうことです。

フィリピンの過激派組織にはインドネシアやマレーシアの他にサウジアラビアやイエメンさらにはロシアのチェチェンからの外国人戦闘員も加わっていることが確認されています。

戦闘経験を積んでより先鋭化したシリア帰りの落武者たちが加わっています。

インドネシアからは、シリアやイラクに向かった人が500人以上、マレーシアからも200人以上が向かったと言われているんですが、そのうちインドネシアにはすでに100人以上が帰国していると言われています。

そうした戦闘経験を積んだ若者あるいは国内で過激な思想に染まった若者たちによるテロの脅威に各国が直面しているというわけです。

 

キャスター:そうすると、どうやってテロを防いだらいいんですか。

 

二村:先週末インドネシアで国際会議が開かれまして、6カ国の治安安全保障担当の閣僚が集まったんですけど、やはり東南アジアをISの拠点としないために、戦闘員の国境を超えた移動を防ぐことが重要だとしまして、情報の共有・国境警備の強化で協力を進めることで一致しました。

ただ、それだけでイスラム過激派の脅威を本当に取り除けるかというと、容易なことではないんです。

これまでも同じような会議が行われてきたんですけど、テロの脅威は一向に収まっていません。

各国の連携がこの地域ではほとんどできていなかったというのが実情でして、やはり各国が協力しあって、戦闘員の情報の把握あるいは過激な思想を持つ若者に対する再教育・カウンセリングといったところに力を入れていかなくてはいけないんだと思います。

それから、そうした戦闘員あるいは過激な思想を持った人たちが日本に来ないとも限りません。

ですので、日本としてもこうした取り組みに積極的に関わっていくことが必要になってくると思います。