一帯一路現場では
8月3日放送 「NHKマイあさラジオ」
キャスター:一帯一路構想は、アジアとヨーロッパを陸上と海上の道でつなごうという壮大な経済圏構想ですよね。
大山:この一帯一路というのは、中国の習近平国家主席が4年前に提唱したものです。
5月には世界130あまりの国々の代表団などが参加して、国際会議が開かれるなど、今国家を挙げてこの構想の実現に力を入れています。
キャスター:中国国内の現場ではどのような取り組みが行われているんでしょうか。
大山:私は中国メディアの団体が受け入れ窓口となった取材団に参加しまして、3日前まで中国を訪問して、現場を見てきました。
一帯一路というのは、現代版の陸と海のシルクロードとも言われますが、この陝西省と福建省は、いずれもかつてシルクロードの起点だった地域です。
私たちは地方政府の幹部などから話を聞きましたが、習主席がこの構想を提唱して以降、地域が注目されるようになったということを契機に、地域の発展につなげようという意気込みを感じました。
実際、陝西省と福建省では、投資が増え、貿易も活発になっており、地元企業の外国への進出も相次いでいるということでした。
キャスター:具体的にはどんな取り組みが行われているんでしょうか。
大山:例えば、中国とヨーロッパを結ぶ国際定期貨物列車の運行です。
具体的には、陝西省の西安市や福建省の廈門市とドイツやポーランドとの間で、それぞれ週3便程度の貨物列車が運行されています。
鉄道輸送は、船での輸送に比べて、コストはかかりますが、時間が3分の1程度に短縮されるということで、電子機器など単価の高いものの輸出にメリットがあるということです。
でも、ヨーロッパとの貿易は、まだそれほど多くはないということでしたが、中央アジアなどヨーロッパまでの沿線地域との貿易が増えていまして、陝西省とカザフスタンとの去年の貿易額は前の年の2倍に、またキルギスとの貿易額は4倍にそれぞれ増えたということです。
この他にも、沿線諸国との大規模な博覧会や商談会の開催、また手続きの簡素化など貿易面での規制緩和を進める自由貿易試験区の導入など、様々な政策を行うことで、貿易や投資などの増加につなげているそうです。
福建省の政府のある幹部は、経済のグローバル化は歴史的なトレンドだ、他国と協力しないなど想像できないと話していました。
アメリカがトランプ政権の下で保護主義的な傾向を強める中、中国では逆に外国との結びつきを積極的に進めようとしていることは、地方政府の人たちの話からもはっきりと伺えました。
キャスター:この一帯一路、日本はどのように関わっていくべきだと考えますか。
大山:安倍総理大臣は5月の講演で、一帯一路について、国際社会のルールに沿ったかたちで実現に向かうことに期待を示しましたが、具体的な取り組みは、今のところはっきりしません。
むしろ中国の勢力圏拡大という思惑もあることから、警戒感もあります。
ただ一帯一路は、習主席肝いりの看板政策で、中国国内では今後も官民挙げて競うように取り組みが加速していくのは間違いありません。
当然、日本企業にとってもビジネスチャンスが広がる可能性もあると思います。
日本はただ、中国台頭へのリスクばかりを考えるのではなく、より一層戦略的に向き合っていく必要があると思います。