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7月の豪雨から学ぶ〜九州北部豪雨1ヶ月

8月4日放送  「先読み!夕方ニュース」

 

キャスター:九州北部豪雨では、福岡県と大分県で36人が犠牲になりましたが、65歳以上の高齢者が7割以上を占めています。

お年寄りを災害からどう守るのか、松本解説委員に聞いていきます。

松本さん、最近の災害を取材して犠牲者に占める高齢者の割合が高いことに気付くんですが、国はどういうふうに対応しようとしてるんですか。

 

松本:東日本大震災の後に法律が改正されて、災害の時に避難に支援が必要なお年寄りなどの名簿を作ることが市町村に義務付けられました。

合わせて、そうした人が避難する行動計画を作ることも求められています。

今回被災した市町村でも名簿作りが進んでいて、このうち福岡県東峰村で被害がありましたけど、ここでは名簿作りと避難支援計画作りが終わっていました。

 

キャスター:どういう計画だったんですか。

 

松本:支援が必要なお年寄りをピックアップして258人の名簿を作りました。

そして一人一人について、近くに住む方などの支援をする人を決めていたんです。

一人のお年寄りについて、一人ないし二人決めていました。

さらに、毎年訓練を行なっていて、今年は災害が起こる10日前に1000人が参加して訓練を行なったばかりだったんです。

 

キャスター:となりますと、今回の災害でそれは生かされたと。

 

松本:生かされました。

ただ限界もありました。

二人が亡くなった野尻地区という山間の集落を取材しました。

大変大規模な土石流が流れ下っていて、12軒のうち4軒が流されたり、潰れたりしています。

ここでは、地区に残っていたり、あるいは雨が強くなったので急遽戻ってきたサポート役の人、二人を中心に軽トラの荷台に乗せるなどして、お年寄りを避難させました。

28人を避難させました。

ただ、これで助けられた人がいるんですけど、一方で声をかけたんですけど遠慮して来なかったお年寄りがいるんです。

このお年寄りのご夫婦二人が亡くなりました。

サポート役の一人の和田さんは、この二人を無理矢理でも連れて来なかったことが悔やまれてならないとおっしゃっているんですけど、一方で事前に支援者の名簿、お年寄りの名簿と個別の支援計画を作っていた事は大変役に立ったと言っています。

 

キャスター:災害を経験して実感したという事なんですね。

 

松本:お話を聞いてよくわかったんですけど、計画がなければやはり大雨が降ってきたら、自分だけ逃げよう、あるいは家族だけ守って逃げようと考えるけれど、あらかじめサポートするお年寄りが決まっていますから、「あそこのお爺ちゃん、お婆ちゃんと一緒に逃げようと思いますよね」と言うんですね。

一方、お年寄りの方も、声をかけられないと、やはりなかなか避難しないと言う人が多いんですと。

和田さんは、長年消防団員も務めていて、こうした経験から、こうした計画をしていた事で、今回の災害で村の中でサポート役に呼びかけられたり、連れられたりして避難したお年寄りは相当いたんじゃないかと話しています。

この要支援者の名簿作りや支援計画作りは、全国の自治体で進められているんですけど、都市部と地方とで事情は違いますけど、そうした地道な備えが重要であるということが改めて示されたと思います。

 

キャスター:高齢者の避難ということでいうと、去年の岩泉町の災害も思い出しますが、施設のお年寄りをどうやって安全に避難させるかというのも重要な課題ですよね。

 

松本:去年は、施設のお年寄りの避難が大きな問題になりました。

今回、先月の豪雨で大規模に浸水した秋田県の大仙市の特別養護老人ホームがありまして、ここは岩手の災害を教訓に、去年の10月に避難計画を作って、訓練も行なっていたんです。

今回それに基づいて、寝たきりの人が多いんですけど、入所者81人を近くの中学校に無事避難をさせて、近くで川が氾濫をして、ここまで浸水は来なかったんですけど、計画通りに避難をして、命を守る対応ができました。

浸水が想定される区域・地域にある高齢者施設などは、計画作りが義務付けられていて、全国に3万あるんですけど、策定できているところは、今のところ8%ぐらいと見られています。

この大仙市の例も、非常に参考になると思います。

台風が迫っているので、住民同士の避難支援の計画や、施設の避難計画があるところはその計画を確認して備える、またない所は、土砂災害や川の氾濫の恐れが高まったらどう対応するのか、家族・近所の人・施設の中の職員の人たちと話し合っておいてほしいと思います。