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イタリア中部地震から1年、復興の現状と課題

8月7日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:およそ300人が死亡したイタリア中部の地震からまもなく1年となります。

被災地の現状についてヨーロッパ総局の堀記者に聞きます。

まずはこの地震による被害状況を改めて整理してください。

 

堀:現地時間の去年8月24日の午前3時36分頃、マグニチュード6.0の地震が人口2600人余りの町アマトリーチェを襲い、これまでに住民や観光客など299人が死亡しました。

また、同じイタリア中部では去年10月にも1981年以降で最も大きいマグニチュード6.5の地震が発生するなど、その後も地震活動は活発で、最初の地震では持ちこたえていた多くの住宅や建物が倒壊しました。

さらに今年1月に相次いだマグニチュード5.0を超える地震では、雪崩も発生し被害はさらに拡大しました。

イタリア政府によりますと、地震によって19万棟余りが被害を受け、最大で3万人余りが避難を余儀なくされました。

 

キャスター:最初の地震からまもなく1年となりますけど、復興は進んでいるんでしょうか。

 

堀:私は先週、被災地のアマトリーチェを取材しましたが、復興には程遠い状況です。

町の中心部では、今も瓦礫の撤去作業が行われていて、メディアだけでなく、住民達も自治体の許可がなければ立ち入りができない状態が続いています。

住宅の復興は遅れていて、再建できたのはわずか10%にとどまっています。

また、仮設住宅の建設も進んでおらず、全体の20%未満しか完成していません。

 

キャスター:なぜ復興がそこまで遅れているんでしょうか。

 

堀:最大の要因は、今も続く地震活動があげられます。

イタリアの国立地球物理学火山学研究所によりますと、イタリア中部ではこの1年間にマグニチュード3.0以上の地震が1100回余り発生しています。

この数は日本でも地震活動が活発とされる熊本地震に匹敵する数で、自治体は地震で被害が拡大する度に、住宅などの被災状況の調査に追われています。

このため、住宅の再建や仮設住宅の建設に想定以上の時間がかかっているんです。

 

キャスター:となりますと、住民生活への影響も大きいでしょうね。

 

堀:住民は今も新たな地震への恐怖にさらされています。

私が取材した地震で夫を失い、自宅も大きな被害を受けた48歳の女性は、まだ仮設住宅に入居できず、支援を受けたキャンピングカーで寝泊まりしています。

すぐそばには観光客が所有する別荘があり、被災者には無償で貸し出されているのですが、この女性は深夜の地震で倒壊したら逃げられないなどと理由を説明していました。

キャンピングカーで寝泊りを続ける被災者に数多く出会い、住民の不安の大きさを感じました。

 

キャスター:復興へ向けて今後まず何から始めなくてはなりませんか。

 

堀:一刻も早い仮設住宅の建設と住民の不安の払拭です。

これだけ地震活動が続く状況は異例ですが、1年間で仮設住宅の供給率が20%に満たないのは大きな問題だと思います。

また、被災地は豪雪地帯としても知られていて、厳しい冬を迎える前に仮設住宅を建設し、住民が安心して暮らせる環境を整備することが急務です。

さらに、被災者の中には地震で職を失ったままの人も少なくなく、復興活動に従事してもらうなど、雇用を生み出す対策も求められています。