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対岸の火事ではない ロンドン集合住宅火災

8月7日放送  「先読み!夕方ニュース」

 

キャスター:今年6月、イギリスロンドンで起きた高層住宅の火災について、中村解説委員に聞きます。

高層住宅の火災と言いますと、外壁が焼ける高層の建物火災、今月4日にUAEのドバイでも起きましたよね。

こうした火災は日本で起きないと考えていいでしょうか。

 

中村:そうは言い切れないところなんですね。

そこでこのロンドンの火災から何を学び取らなければならないのか、日本の火災対策の課題を考えてみたいと思います。

 

キャスター:このロンドンの火災では80人ほどが亡くなられましたよね。

どうしてこんなに大きな被害になったんでしょうか。

 

中村:捜査当局などが調べているところではありますけど、大きく避難と外壁の問題が指摘されているんです。

まず避難ですけど、24階建てのこの高層住宅では、建物の外側は全て住居で人が住んでいるところで、中心部分の内側に階段とかエレベーターがまとめてあったんですね。

階段は一つしか無かったので、階段に煙が充満するなどして、避難する経路が確保できなくなったということが、亡くなった方が多かったことにつながったと指摘されているんです。

 

キャスター:ロンドンの火災なんですけど、特徴として外壁が一気に燃え上がったというのがあげられると思うんですが、なぜあの様な燃え方をしたんでしょうか。

 

中村:外壁には断熱材が取り付けてあったんですね。

さらにその外側にパネルが設置されていました。

 この断熱材が焼けたこととその外側のパネルも焼けたということで、大規模な外壁の火災につながったとみられているんです。

その断熱材とかパネルに使われていた材料の種類が比較的燃えやすい物だったのではないかなどといった指摘があるんですが、この辺の詳しい原因は当局の調べを待たなくてはならないというところです。

 

キャスター:そうした火災というのは日本では起きてるんですかね。

 

中村:国内では比較的最近起きた高層ビルの火災としては1996年に広島のマンションで起きた火災などがありますけど、ロンドンの様な外壁を伝わって火災が建物全体に広がったという例は無いですね。

一方で、海外では毎年の様に高層住宅とか高層ホテルで繰り返しこういった火災は起きているんです。

 

キャスター:ロンドンの火災の場合、避難と外壁の問題ということですけど、日本の場合はどうなんですか。

 

中村:日本でこういうことが起きないと言い切ることはできないというのが現実だと思うんですね。

ひとつ避難について言うと、ロンドンの様なタワー型の超高層のマンションは日本にもありますけど、二つ以上の階段があって、逃げる経路も二つ以上確保されたり、あるいは階段に煙とか炎が入らない様な扉で守るというようなことをやっているので、地上に降りるための避難経路を確保できるようにしています。

こうしたことから、日本では避難ができなくなって大勢が犠牲になるという火災は起きにくいというのが専門家の見方です。

ただ外壁については課題があると指摘されています。

外壁を伝わって日が広がらないようにするルールというのが日本でどうなっているのか見てみると、建築基準法では窓からの炎が上の会の窓に広がるのを防ぐために原則上下の窓の間隔を90センチ以上開けるなどということは定めてあるんですが、外壁の外側に取り付ける断熱材とかパネルについての規定がないというのが現状なんですね。

また法律ではないんですが、自治体の担当者などが作っているいわゆるガイドラインがあるんですけど、このガイドラインでも上の階への延焼を防ぐことについて明確に定めたルールというのはないんです。

つまり、外壁を伝わって日が広がらないようにするような明確なルールがないというのが日本の現状なんですね。

 

キャスター:そういう状況の中で、日本には外壁に断熱材やパネルを取り付けた建物はどれぐらいあるんですか。

 

中村:国土交通省も調べたりしていますけど、全国的なことになると実態はよくわからないというのが現状なんですね。

壁に断熱材やパネルを取り付けるメーカーとかそういう工事をしている業者を取材すると、例えば断熱材を取り付けるときには火にさらされても燃えないように断熱材の表面を完全に燃えないもので覆うようにしているとかしてるんですね。

これはヨーロッパとかアメリカなどの海外のルールに準じた設計をしているということなんですね。

またより燃えにくいような特殊な材料を使っているケースもあるんですね。

 

キャスター:そういうことを聞くと対策は日本ではできていると考えていいんでしょうか。

 

中村:そうも考えられるんですが、ただ現状に課題があると考える専門家は少なくないんですね。

法律などに規定がない中でそういった対策が本当に徹底されているのか、あるいは日本の実情に合ったようなルールがなくていいのかというようなことが指摘されているんですね。

外壁に火が回るような火災が起きたときというのは非常に危険ですので、そういった業者側の自主的な取り組みだけでは不十分だと思います。

 

キャスター:どんな対策が必要になってくるんでしょうか。

 

中村:国土交通省は、このロンドンの火災の状況などを踏まえて、必要な対策を検討することにしています。

先ほど言ったガイドラインを作った全国の担当者などで作る団体もガイドラインを見直す必要がある家内か今月中にも協議を始めることにしています。

いずれにしても、国レベルのルールづくりというのが求められていると思います。

例えば火がつかないように外壁に取り付ける断熱材やパネルには不燃性のものにするということを要求するとかですね、あるいは海外にあるように断熱材の表面を覆うなど火が届かないような作り方をするように求めることなどが必要だと思います。

また仮に、断熱材やパネルが燃えても、その日がそのまま上の階に広がるのを抑えるように、壁を燃えない材料で区切るというようなことをするとか、あるいは梯子車が届かなくなる11階以上の建物については、外壁についてのルールを厳しくするといったことを検討する必要があると思います。