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新入社員の自殺。人格否定の新人研修が原因だとして、遺族が会社側を提訴

8月8日放送  「荻上チキ・Session-22」

 

2013年に大手製薬会社ゼリア新薬の新入社員の男性が自殺したのは研修中に受けた講師によるパワハラなどが原因だとして、遺族がゼリア新薬と研修を実施したコンサルタント会社ビジネスグランドワークスなどを相手取り、損害賠償を求める裁判を起こしたことがわかりました。

遺族側の弁護士によりますと、当時22歳だった男性は、新入社員研修中講師から同期社員の前で過去にいじめを受けた経験について告白するよう強要されたり、周囲に隠していた吃音を指摘されるなどした後、精神疾患を患い自殺したということです。

労働基準監督署は一昨年、男性の自殺と研修との因果関係を認め、労災として認定していました。

 

荻上チキ

いま裁判を起こしているということで、具体的な事柄がさらにこれから報道で出てくると思いますが、今回の研修が異常な内容になっていたんじゃないかということは、注目に値すべきものだと思います。

いじめを受けていた体験とか吃音を指摘されたという点に関しては、家族側は事実を否定しています。

過去にそうした吃音を聞いたことはないと。

だから、自分の過去のトラウマを吐き出すようなことを強要される中で、何かを言わなくてはいけないという格好で、そういった事実ではないことを言わされていたんじゃないかとか、いろんな話が出ていたりするんですけど、やはり集中的に圧力をかけられて、ストレスが高まってそこから逃げることが出来なくて、その関係性がこれからも続いていく、逃げようと思っても、逃げた先でさらに他の人に迷惑をかけるんじゃないかというような感覚に陥って、非常にメンタルが参っていく、鬱のような状態になっていく、というような回路というものはこの話を聞くだけで揃っているわけですよね。

そういった状況というものを、いかに会社の側がストレスを取り除いていくのかということがこれからより重要になってくるのに、ストレスをより味わわせて、それに耐えた者のみが一流の戦士となれるという発想の企業マインドというのは、非人道的であるし、古い上に、古かった当時ですら科学的根拠があるかと言えばそうではなくて、単に生き残った奴は生き残った奴でそうじゃない奴を振るいに落とすという方法なのであって、雇ったほとをちゃんと育てるという発想ではないんですよね。

よくストレスに耐える力を身につけて社会に出なければいけないんだということを言う人がいますけど、社会に出る時にはストレスに耐える力ではなくてストレスをおかしいと思って拒絶する力というものを身につける方がむしろ重要だと思います。

個人の能力としてというよりは、そういった風にみんながなるように社会としても目指していきましょうということが重要で、個人がストレスをはねのけるんだということが、あまりに推奨されすぎているわけですけど、もちろん大事だと思いますよ、ストレスに対抗する力はあった方がいいとは思います。

ただ、個人にそんなにストレス耐性ばかり言って、社会にあるストレス要因の方をなんとかしなければ、元も子もないし、そっちの方を疑う力をみんなが身につけなくてはいけない。

そういった研修こそが本来必要で、会社の側から理不尽な指導を受けた場合には、労基法でこうですよという、そうした研修をやってくれれば、ホワイト企業ですよね。

そうではなくて、上司なども含めた理不尽な叱咤などに耐えなくてはいけないですよみたいな、そんなレクチャーをする講師はいらないですよね。

よくわからない研修をやっている会社って未だにたくさんあるんですけど、研修の効果測定をどうしてるんだろうと思いますよね。

この実態については、しっかりと把握すると同時に、パワハラとか様々なプレッシャーをより適切に対応していくような企業体質あるいは社会の体質になってほしいなと思います。