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ASEAN50周年、東ティモール加盟の課題は

8月9日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:ASEAN東南アジア諸国連合)が創設から50年の節目を迎えました。

今、東ティモールの加盟がいつ認められるのかという点に注目が集まっています。

東南アジア担当の高橋解説委員に聞きます。

高橋さん、東ティモールというのは、比較的最近独立した国でしたよね。

 

高橋:そうですね、俗に21世紀最初の独立国とも言われます。

というのは、ポルトガルによる植民地支配とインドネシアによる占領の後、今から15年前2002年に独立を果たしました。

人口およそ120万人で、面積も東京・千葉・埼玉・神奈川と4つの都県を合わせたのと大体同じくらいの小さな国なんです。

独立後の国づくりを支援するために、かつて日本から陸上自衛隊のPKO部隊が派遣されたこともありましたからご記憶の方も多いかもしれません。

当時は治安が一向に安定しなかったり、石油・天然ガスの開発以外にめぼしい産業がなかったりして、随分先行きを心配されましたけど、近年は治安も格段に安定し、先月から議会の選挙が行われたんですけど、これも国連の手は借りず全て自前で滞りなく行われました。

その東ティモールが6年前からASEANに加盟を正式に申請しています。

この加盟を認めるかどうかをいまASEAN10カ国が検討しているんです。

 

キャスター:加盟の申請は認められそうなんでしょうか。

 

高橋:まさにそこがいま焦点となっているんです。

日がちティモールはASEANが創設50年の節目を迎えた今年中にも加盟を果たしたいという意欲を見せています。

しかし昨日閉幕したASEANの外相レベルの一連の会議では現在の加盟国から反対意見こそ出なかったものの、逆に年内加盟を積極的に後押ししようという意見もまた出なかったんです。

 

キャスター:なぜでしょうか。

 

高橋:問題の一つはASEANが抱えている域内格差という問題です。

域内の先進国シンガポールと、後発国と呼ばれるミャンマーカンボジアとの間には、一人当たりの名目GDPで40倍もの開きがあります。

いま東ティモールの加盟が認められれば、この後発国にあたりますので限られた援助の奪い合いになりかねないあるいはASEANが一昨年から進めている経済共同体づくりにも支障が出かねないというのです。

 

キャスター:となりますと、加盟が認められるまでには、まだ時間がかかりそうですね。

 

高橋:問題は加盟が認められるかどうかというよりも、それがいつ認められるかです。

というのも、ASEANには全会一致を前提とする独特の意思決定法があるからです。

もともとASEANは、政治体制も経済規模も民族も宗教も異なる国々が一つにまとまることで中国やアメリカなど大国のいいなりにはならない独自の存在感を高めてきました。

ところが、50年前5カ国体制でスタートしたASEANは今や10カ国、加盟国が増えて多様化が進めば進むほど、コンセンサス作りに時間がかかり、互いの利害や温度差が逆に大国による干渉を招きかねないジレンマを抱えているんです。

ASEANは今年11月に、フィリピンの首都マニラの北西にあるパンパンガ州というところで、今度は首脳レベルの会合を開きます。

果たしてそれまでに東ティモールASEAN加盟について結論は出るのかどうか、東ティモールの加盟の是非をめぐる議論は、いまのASEANが直面している課題そのものを浮き彫りにしています。