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中国とドイツが急接近 その背景と思惑は

8月10日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

 キャスター:世界第2と第4の経済大国中国とドイツが急接近しています。

その背景や思惑について、国際部の木村記者に聞きます。

木村さん、中国とドイツが接近する動きが目立ちますね。

 

木村:政府間の交流がかつてないほど緊密になっているんです。

象徴的だったのは先月ドイツのハンブルクで開かれたG20です。

中国の習近平国家主席はG20の開会を前に、国賓としてドイツ入りし、その滞在日数は実に5日間にも及びました。

ドイツ訪問中、習主席はメルケル首相と共に首都ベルリンの動物園に送られたパンダを見学したり、両国の少年たちによるサッカーの試合を観戦したりしました。

習主席の訪問の様子は中国の国営メディアが大々的に伝え、ドイツの友好関係を盛んにアピールしていました。

私は去年までの4年間、特派員として首都ベルリンに駐在しましたが、ヨーロッパを牽引するメルケル首相の元には連日世界中から首脳や要人がひっきりなしに訪れていました。

極めて多忙とも言えるメルケル首相が、これだけの時間を割いて対応するのは異例のことです。

 

キャスター:この二つの国が接近する背景には何があるんでしょうか。

 

木村:双方にとって相手国が極めて重要な存在になっているからです。

中国はアジアとヨーロッパとをつなぐ巨大な経済圏構想一帯一路を実現させる上でドイツを重視しています。

EUの実質的な盟主でEUの意思決定に最も影響力のあるドイツとの関係を強化することでヨーロッパの巨大市場へのアクセスを容易にしようという思惑がうかがえます。

また、ドイツにとって中国は去年アメリカを抜いて第1の貿易相手国になりました。

ドイツで最も重要な企業の一つ大手自動車のフォルクスワーゲンは、排ガスの不正で信頼が揺らぐ中でも、去年世界の新車販売数が1千万台を突破し、世界一となったんですけど、中国での販売が全体のおよそ4割を占めて堅調に伸びたことがその最大の要因です。

 

キャスター:その一方で課題はないんでしょうか。

 

木村:貿易が増えるに従って、一部で深刻な貿易摩擦を生んでいるのも事実です。

特にルル工業地帯を抱えるドイツの鉄鋼業界は中国の安価な鉄鋼が大量に流入していることに強く反発しています。

経済の減速や過剰生産の問題をヨーロッパへの輸出増で解消しようという中国の狙いは、ドイツにとってはメリットばかりではありません。

また中国の人件問題への懸念もあります。

ノーベル平和賞を受賞した中国の作家で先月亡くなった劉暁波氏は、ドイツでの治療を望み、ドイツ政府も出国を後押ししていましたが、中国側は断固として認めませんでした。

中国政府の対応には、ドイツでも批判が相次いでいます。

ナチス旧東ドイツ時代の教訓から、人権意識の強いドイツでは、中国の人権問題は無視できないテーマです。

経済的な利益を求めて急接近している中国とドイツですが、真の友好関係を築くのには、まだ課題は残されていると言えます。