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甘い見通しの学部新設の将来は? トークファイル山田恵資

8月7日放送  「森本毅郎・スタンバイ」

 

山田:今問題になっています加計疑惑ですけど、次の焦点は8月末に結論が出ます加計学園獣医学部新設の可否なんですが、それにちなみまして、いま一度専門職の資格取得を目的とする大学の設置が熟慮なく認められると何が起きてしまうかという、ひとつの悪い洗礼を見てみたいと思います。

それは何かと言いますと法科大学院なんですね。

これは司法改革の一環として法務省文科省などが中心となって進めていったわけなんですが、2002年政府はそれまで年間1200人程度だった司法試験の合格者を一気に3000人にするという閣議決定をいたしました。

理由はいわゆる経済のグローバル化とか知的財産分野などの裁判が増えるという予想と言いますか見立てで、弁護士や裁判官などの法曹人口を増やそうという狙いだったわけです。

そして2004年、法科大学院制度がスタートしました。

この時は74の大学に法科大学院が設置されました。

ところが今はこれが39校になってしまったんです。

廃止が15校、募集停止が20校で、ほぼ半分に減って、来年2018年も募集をしているのは39校になってしまっています。

関東では話題になりましたが青山学院大学とか立教大学とか桐蔭横浜大学なども募集停止に踏み切ったそうです。

これは、ひとつは法科大学院の志願者の数が激減しています。

法科大学院がスタートした2005年のデータなんですけど、志願者が4万人、入学者が5500人という数字だったんですが、これが2017年度の志願者数は8000人、入学者は1700人ということで、大きく下回っています。

この理由はそもそも制度設計が甘いということです。

需要が多いと思っていたら全然訴訟が増えるようなこともなかったということですね。

つまり供給過剰になってしまったんですね。

2015年に裁判所が受理した事件数は2004年に比べて4割減ったということですので、弁護士になっても仕事がないということがある種定着してしまっているわけなんです。

それから法科大学院に行っても司法試験に受からないということがあって、これはレベルの問題かもしれませんが、この時に少し司法試験を優しくというか問題をあまり専門的にしないというようなこともなされたわけですけど、それでも司法試験に受からないということでした。

当初の見通しでは法科大学院から司法試験の合格率は7割から8割と見込んでいたんです。

ですから法科大学院に入ればかなり高い確率で合格できるという見込みがあったんですけど、現実には2割台に低迷しているということです。

そこに追い打ちをかけましたのが、2011年からスタートした予備試験という試験があるんですが、これは法科大学院に通わなくても司法試験の受験資格が受けられるという制度なんですけど、この予備試験から司法試験に合格する人の割合が6割なんですね。

今では司法試験の合格者全体の15%がこの予備試験から通っているということです。

そうして状況で国は法科大学院に対して司法試験の合格率などによって補助金を一部打ち切るという策にも出てまして、国から大学院への補助金をゼロにする制度を導入したために2015年度で13校が募集停止しています。

お金がなければ運営していけませんから。

こうしたことで10年間でいろんなことがあったわけなんです。

これもいわゆる岩盤規制の看板のような形で導入されていて、文科省も完全に見通しを誤ったわけです。

文科省の幹部からも聞いたことがありますけど、精査と言いますか反省をしっかりしないといけないと。

今回の加計学園獣医学部の新設の問題についても、一体需要と供給はどうなんだということが言われているわけです。

政府は今のところそれにははっきりとした数字を出していないんですけど、競争原理に任せればいいという人もいてですね、しかしそうであれば、一時的には過剰状態が生まれるわけで、そうすると質の問題が新たな問題になります。

知り合いの司法関係者何人かに聞いてみたら、大きな声では言えないけどということですけど、やはり正直言って新しい制度になってからの弁護士の質がややバラツキが大きくなったと遠回しな言い方ですが、質が悪くなっているという見方もあるわけですね。

そうしたことを教訓にするのであれば、受給をしっかり見た上で増やさないと同じ問題が起きると思います。