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追い詰められたIS NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月13日放送

解説:出川解説委員

 

キャスター:3年前イラクとシリアの領土で一方的に国家樹立を宣言し、世界に衝撃を与えた過激派組織ISですが、そのISに対する軍作戦が大詰めを迎えています。

出川さん、対IS作戦はどのように進められているんですか。

 

出川:イラク北部のモスルと、シリア北部のラッカ、この二つの都市をISから奪還するための軍事作戦が大詰めを迎えています。

まずイラク第二の都市モスルは、ISにとって最も重要な拠点です。

イラク政府軍とアメリカ主導の有志連合それにイラククルド人勢力の部隊が去年10月からモスルの奪還作戦を進めてきました。

すでにモスルの東部は完全に制圧し、西武もおよそ90%を奪還、ISが支配しているのは旧市街とその周辺だけです。

追い詰められたISは、住民10万人以上をいわゆる人間の盾にして激しく抵抗しています。

ISは、脱出しようとした住民を容赦なく殺害し、この半月で230人以上が犠牲になりました。

このため、作戦を慎重に進める必要があり、モスルの完全制圧がいつになるかわかりません。

シリアのラッカは、ISが首都と位置づけています。

今月の6日、シリアのクルド人勢力を主体とするシリア民衆軍の部隊がラッカの制圧に向けた、最終的な作戦を開始しました。

アメリカ軍の空爆による支援を受け、東・西・北の3方向から部隊を進め、一部はラッカの市街に入りました。

これとは別に、アサド政権軍も西側からラッカに向けて進撃しています。

ただ、IS側も塹壕バリケードを作って、爆弾を仕掛け、住民を人間の盾にしています。

ISは、これまでのイスラム過激派組織とは異なり、領土を確保し、国家の体裁をとって活動してきましたが、この領土を失う日が来るのは確実です。

擬似国家としてのISは、終わりを迎えるでしょう。

しかしながら、ISの戦闘員は、国境を超えて別の場所に移ってテロを行うケース、あるいはISの過激な思想がインターネットを通じて拡散し、それに共鳴した個人や組織が自発的にテロを実行するケースが後を絶ちません。

言ってみれば、思想や運動としてのISはこれからも続きます。

イギリスではマンチェスターのコンサート会場とロンドンの中心部で相次いで起きた2件のテロで、合わせて29人が犠牲になりました。

イランでは先週議会など二つの重要施設が同時に襲撃され、合わせて17人が犠牲になりました。

また、アフガニスタンでは、各国の大使館が集まる地域が自爆テロの標的になって、150人以上が犠牲になりました。

インドネシアやフィリピンでも、ISによると見られるテロが起きています。

こうしたテロを防ぐためには、テロの実行犯らが主にインターネットを通じて過激な思想に染まり、テロを扇動されてきたという現実を踏まえて、各国がサイバー空間を監視し、過激な思想の拡散とテロの計画を未然に防ぐ対策が必要になると思います。

関係各国の密接な連携が不可欠です。

3年前、ISの予期せぬ台頭を招いたのは、シリアで続く泥沼の内戦と、イラクの宗派対立による政治の混乱でした。

ISとの戦いは、軍事作戦に加えて、政治面の取り組みが極めて重要です。

今こそ、国際社会が一致協力して支えていくことが、求められています。